ダイハツ・ヨネックスジャパンオープンから、リオデジャネイロ五輪後の世界を分析する
リオ後の3年間で女子ダブルスは日本時代に
2016年のジャパンオープンは華やかに幕を開けた。会場は満員御礼。1カ月前のリオデジャネイロ五輪・女子ダブルスで金メダルを獲得した日本の髙橋礼華/松友美佐紀(日本ユニシス)の凱旋試合になったからだ。
しかも、決勝がリオ五輪決勝と同じカードになったのだから観客はたまらない。タカマツと顔を合わせたのは、デンマークのカミラ・リター・ユール/クリスティナ・ペダセン。
決戦はファイナルの末、デンマークペアに軍配が上がり、ペダセンは「私たちが勝って日本のファンの方に申し訳ないという気持ちです。しかし、決勝で尊敬する髙橋/松友ペアと再戦し、しかも勝てたことはうれしく思います」と爽やかに振り返った。
あれから2年あまり経ち、女子ダブルスにおける世界の勢力図はずいぶん変わった。
2017年以降、ダイハツ・ヨネックスジャパンオープンの女子ダブルスは日本勢が連覇した。2017年は髙橋/松友、2018年は福島由紀/廣田彩花(アメリカンベイプ岐阜)が優勝。この結果が象徴するように、いま日本がリオ五輪後の世界を席巻している。
現在、世界ランキングトップ3を占めるのは日本勢で、2018年世界選手権優勝の松本麻佑/永原和可那(北都銀行)、福島/廣田、髙橋/松友がランクイン。層が厚くなり、今年のダイハツ・ヨネックスジャパンオープン、そして東京五輪の王座に日本勢の誰が就いてもおかしくない状況へと変貌している。
男子シングルスは桃田やアクセルセンが台頭
ここ2年で、女子ダブルス以上に勢力図を大きく変えたのは男子シングルスだろう。ダイハツ・ヨネックスジャパンオープンでは05年以降、林丹(リン・ダン、中国)が計3回、リー・チョンウェイ(マレーシア)が計6回、優勝したことから分かるように、00年代後半からの10年間を北京とロンドン五輪の決勝を争った2人が世界を引っ張ってきた。
しかし、2017年のダイハツ・ヨネックスジャパンオープン決勝でビクター・アクセルセン(デンマーク)がリー・チョンウェイを破ったのを境に、世代交代は一気に進んだ。昨年もアクセルセンと同い年の日本の桃田賢斗が優勝。現在、この2人に、昨年、ワールドツアーファイナルズを制した23歳の石宇奇(シー・ユーチー、中国)が絡んで覇権争いを繰り広げている。
リオ五輪後、男子ダブルスもダイハツ・ヨネックスジャパンオープン覇者が世界トップに
そしてリオ五輪後、総入れ替えといっていいほど、勢力図が変わったのは、男子ダブルスだ。リオ五輪でベスト8入りしたペアでいまも世界トップ10にいるのは、銀メダルのゴー/タンのみ。
代わりに台頭したのは、2017、2018年ダイハツ・ヨネックスジャパンオープンを制したスカムルヨ/ギデオン(インドネシア)だ。昨年のDYJ以降、ワールドツアーで5勝を挙げており、すっかり第一人者の貫禄を身につけている。
2人に対抗するのは、2016年優勝の李俊慧/劉雨辰(リー・ジュンホゥイ/リゥ・ユチェン、中国)。ダイハツ・ヨネックスジャパンオープンが2人にとってスーパーシリーズ(ワールドツアーの前身)初優勝で、「これを足がかりにさらなる飛躍をしたい」と口を揃えていたのが印象的だった。
男子ダブルスはここ3年でダイハツ・ヨネックスジャパンオープンを制した2ペアが世界を引っ張っている。
女子シングルスはリオのメダリストたちがいまも活躍
男子ダブルスとは対照的に女子シングルスは、リオ五輪のメダリストたちが、そのまま世界トップを保持し続けている。しかも、ダイハツ・ヨネックスジャパンオープンを制した選手たちが代わる代わるワールドツアーで優勝している状況だ。
2012年優勝の戴資穎(タイ・ツーイン、チャイニーズタイペイ)は、世界ランキング1位。
2013年優勝の山口茜(再春館製薬所)は、世界ランキング4位。
リオ五輪の銅メダリストで、2015年優勝の奥原希望は、世界ランキング3位。
リオ五輪の金メダリストで、2017、2018年優勝のキャロリーナ・マリーン(スペイン)は世界ランキング8位。マリーンは現在、今年1月に負ったケガのため戦線を離脱し、やや世界ランキングを落としているが、復帰すれば必ず上位へ顔を出す選手だ。
混合ダブルスは2018年優勝ペアが抜きんでる
リオ五輪後、混合ダブルスは、2018年優勝の鄭思維/黄雅瓊(ジェン・シーウェイ/ファン・ヤチョン、中国)が世界に君臨している。昨年のダイハツ・ヨネックスジャパンオープン以降、ワールドツアーで7勝。2016年、鄭思維は、中国の女子ダブルスのエース陳清晨と組んで、混合ダブルスを制したが、年上のクールビューティ黄雅瓊とのペアですっかり落ち着いた。
ちなみに、ここ10年、ダイハツ・ヨネックスジャパンオープンの混合ダブルスを制した中国ペアは、"姉さん女房率"が高い。2007年の鄭波/高崚、2010年、2013年の張楠/趙蕓蕾しかり。男子の強打に臆さずゲームメイクするしっかり者は年上に多いのかもしれない。