大会の見所

大会の見所7 男子シングルス注目選手2

林丹(中国)
リン・ダン L IN DAN 
世界ランキング16 位(6月25日付)

1983年生まれのリン・ダンは今年36歳になる

 4月7日、古くからのバドミントンファンが「さすが」と称賛の声を挙げた。

 ダイハツ・ヨネックスジャパンオープンと同じ格のマレーシアオープンで中国の林丹が優勝。北京五輪とロンドン五輪を連覇した35歳のレジェンドが、2017年マレーシアオープン優勝以来、2年ぶりのメジャートーナメント制覇を成し遂げたからだ。

 かつて栄華を誇った王者に、近年、華々しい成績はない。昨年のダイハツ・ヨネックスジャパンオープンこそ準々決勝に進出したが、その後のメジャーツアーは韓国オープンとデンマークオープンで16強に入ったのが最高。そのほかは1回戦で散っている。

 だからマレーシアオープンに臨む心には迷いがあったという。「昨年のパフォーマンスは理想に程遠かったのでプレッシャーもあったし、自分を信じられないという状態でした」。

 しかし、林丹は勝った。1回戦から決勝までの5試合のうち、4試合がファイナルゲームで、残り1試合は延長ゲームだった。「いま自分はキャリアの末端にいる」と自覚する身には、ファイナルゲームが終わるたび、体に重い鉛が科されていく感覚だっただろう。

 だから決勝戦にはかつての圧倒的な速さやパワーはなかった。そのぶん、際立っていたのはベテランだからこその制球力とタクティクスだ。ゆったりしたリズムでロブ主体のラリーを展開。勝つためには"できるだけミスをしない""ミスをさせる"という基本を見せつける円熟味のある試合運びだった。

 そして感動を誘ったのはラストシーンだ。最後のラリーだけは絶頂期を思わせる力強いスマッシュ&ネットでポイントを獲得。その直後、林丹はコートの隅でヒザを折ってうずくまり、万感が胸に迫る姿を見せていた。怖いもの知らずで、誇らしさが顔に浮かんでいた2度の五輪とは異なる表情だ。ここには、自身の弱さも知ったレジェンドの重厚な喜びがある。

 世界中から尊敬されるレジェンドのプレーが見られる日はすでに限られている。限界への挑戦を止めない姿には神々しさすら漂う。そんな林丹が日本でマレーシアオープンの再現をしたら、新たな伝説が増えることになる。



⦿林丹

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