大会の見所

大会の見所10 男子シングルス注目選手3

リオ五輪後、中国のエースに成長した石宇奇

石宇奇(中国)
SHI Yuqi シー・ユーチー
世界ランキング2位(6月25日付)

「桃田に並び立つ生真面目な中国のエース」

 今年5月のスディルマン杯決勝、中国対日本。2-0で回ってきた第3試合、石宇奇は世界ランキング1位の桃田賢斗を69分の激闘で下し、コートに駆け込んできた仲間にもみくちゃにされた。

 だが、しばらくして歓喜の輪をそっと抜け出し、小走りでコート脇へ戻ってきた。そして桃田と握手を交わすと、感謝を示すように頭を軽く下げていた。礼儀正しく、生真面目なことで知られる23歳の人柄をしのばせる一幕だった。

スディルマン杯での勝利後、桃田と握手を交わす石宇奇

 一言で言えば、石宇奇は桃田の最大のライバルだ。各国に猛者は数多くいるが、いま石宇奇以上に、桃田の王座を脅かしている存在はいない。昨年の世界選手権の決勝こそ、完敗だったが、年末のビッグトーナメント、ワールドツアーファイナルズで初めてライバルから星を奪った。そして2勝目が特別な緊張のかかる団体戦・スディルマン杯の決勝だ。

 桃田にしてみれば、敗れたのがワールドツアーでの1試合であれば、そういう日もある、と気持ちをすぐに切り替えられただろう。しかし石宇奇に敗れたのはいずれも大舞台だ。危機感を覚えないはずがない。石宇奇は桃田に並び立つ場所まで上がってきたのだ。

 こうして石宇奇が成長した理由に、中国の強化体制が変わったことが挙げられる。2年前から中国チームの強化の指揮を執っているのは、かつてダイハツ・ヨネックスジャパンオープンを制した元選手たち。シングルスコーチの夏煊澤氏は40歳、ダブルスコーチの張軍氏は41歳と、指導者として脂が乗る年齢で情熱もある。

右は中国チームの夏煊澤コーチ

 石宇奇は厳しくも愛情ある指導のなかで、急激に力を伸ばした。もともと直線的な弾道の球には威力があり、定評が高かったが、桃田が多用するような柔らかい球が少ないのが欠点だった。しかし、ここへきて自分では柔らかい球を数多く使えなくても、その対応力は確実に上がっている。日ごろから生真面目に桃田を研究している成果だろう。

 ダイハツ・ヨネックスジャパンオープンで石宇奇と桃田が当たるとすれば決勝戦。男子シングルス最高のカードになる。世界選手権も目前にしているなか、両者がどう成長しているか、見どころは多い。



⦿石宇奇(中国)

■プロフィール 1996年2月28日(23歳)/184㎝65kg/右利き

⦿RESULTS
'18ワールドツアーファイナルズ優勝
'18全英選手権優勝