観戦記

決勝 7月28日(日)

男子シングルス
新たな歴史を切り開く。桃田が日本人初の大会連覇を掴む。

桃田 賢斗(NTT東日本) 21-16/21-13 ヨナタン・クリスティ(インドネシア)

 ディフェンディングチャンピオンとしてこの大会に臨む世界ランキング1位の桃田賢斗が大きな歓声を受けて決勝の舞台に登場し、この大会すべてストレート勝ちで上がってきたインドネシアのヨナタン・クリスティと対峙した。


 第1ゲーム、ラリーの中で積極的に強打を放ってくるヨナタンに対し、桃田はロブショットのシャトルコントロールに苦しみ、2-5と追いかける展開となる。しかしここからフォアのストレートスマッシュを相手コートに突き刺すと、スライスショット、スマッシュを小気味よく決めていき、5連続得点で早々に逆転する。このあと、互いにコートを縦横無尽に駆けて緊迫したラリーで得点を奪い合っていき、詰めかけた観客は一同にスーパープレーの数々に引き込まれていく。桃田は15-12の場面から得意のネット前で優位に立って抜け出していくと、スマッシュをサイドラインに沈めて21-16としてこのゲームを奪う。



 王手をかけた第2ゲーム、コートを広く使った見ごたえのあるラリーが続く。ヨナタンはネット前で巧みなディセプションを利かせたショットを織り交ぜ、桃田の体力を削りにかかる。それでも崩れずに自分のプレーを出せるのが今の桃田のナンバーワンたる所以である。桃田は9-8の場面からスピードを上げていき、ヘアピン、スマッシュともに相手を上回って8連続得点を奪い、勝利を一気に引き寄せる。ここからヨナタンも絶妙なネットインとなるクロスヘアピンや角度あるクロススマッシュを決めるなどして観客を沸かせるが、大勢は決していた。最後は果敢に飛びついて放ったスマッシュがネットにかかり、桃田が21-13として日本人初のダイハツヨネックスジャパンオープン2連覇を達成した。


 試合直後のコート上インビューにて、応援への感謝の気持ちを述べる際には感極まって言葉に詰まった桃田だが、1年後の東京オリンピックに向けた思いを聞かれると、「今回成長をお見せできたとは思うが、オリンピックとなるとまだこのままでは勝てないと思うので、もっともっと強くならないといけない。また、自分1人では勝てないので、これからも皆さんに支えてもらいながら、感謝の気持ちを持って頑張っていきたい。」と、さらなる高みを目指す求道者として、確かな思いと決意を語った。


女子シングルス
2週連続優勝に確かな手ごたえ!6年ぶりの優勝に精神的な成長を実感

山口 茜(再春館製薬所) 21-13/21-15 奥原 希望(太陽ホールディングス)

 世界ランキング2位で先週のインドネシアオープンで優勝し好調を維持している山口と、世界ランキング3位でプロ転向後初の日本でのトーナメントに臨んでいる奥原の日本人対決となった。何度も対戦し、共に練習してきている二人はお互いの手の内を知り尽くしており、例外なくタフな試合となっている。最終日のオープニングゲームということもあり、超満員の観客の視線がライトアップされたセンターコートに釘付けとなった。





 第1ゲーム、「ロングラリーにならないようにスピードを上げていきたい。」と話していた山口だったが、出だしから長いラリーが展開され、ラリー戦に分がある奥原に先行されてしまう。しかし、ラリーを我慢しつつ、チャンスでスピードをあげるように意識したという山口が8-9からスマッシュを決めるなど7連続ポイントで一気に流れを掴む。結局は21-13と山口が奪う。


 第2ゲームに入るとスマッシュなど攻撃的なショットで奥原が攻め立てる。5-9と奥原ペースで進むが、互いに厳しいショットの応酬が続くと、奥原のロブ、クリアがアウトになるなどミスが重なる。チャンスの場面で山口がきっちりとスマッシュを叩き込み11-10と劣勢を跳ね返す。ここからはお互いに点を取り合うが、ショットに精彩を欠く奥原に対して、ますます集中力が高まった山口が6連続ポイントで21-15とし、6年ぶり2回目の優勝を果たした。

 試合後の会見で山口は「2週連続の優勝は初めての経験なので、やっぱりすごく達成感がありますし、うれしい気持ちもありますが、きつい時に周りのいろいろな人に助けられてたり、観客の皆さんもそうですが、改めていろいろな人に支えられてバドミントンができていると実感したので、忘れないでやっていきたいです。」と話し、「すぐに世界選手権があるので、挑戦者の気持ちで自分の精一杯のプレーをしたい。」とさらなる飛躍に向けて意気込みを語った。


男子ダブルス
圧倒的なスピードとアタック力で決め切ったギデオン/スカムルヨが大会3連覇を達成

マルクス・フェルナルディ・ギデオン/ケビン・サンジャヤ・スカムルヨ(インドネシア)21-18/23-21 モハマド・アッサン/ヘンドラ・セティアワン(インドネシア)

 世界ランキング1位でトリッキーなプレーと超人的なスピードでアタック力を誇るギデオン/スカムルヨと、世界ランキング4位で鉄壁のレシーブとドライブを得意とするアッサン/セティアワンが決勝戦で激突。先週のインドネシアオープン決勝と同じカードとなった。この対戦はギデオン/スカムルヨが6連勝中であり、雪辱を晴らしたいベテランペアがどう攻略に臨むかが注目された。

 第1ゲームは、ギデオン/スカムルヨがドライブを中心としたスピーディなラリーから甘いリターンをスマッシュ、前衛でのプッシュで豪快に決めていく。レシーブ力が高いアッサン/セティアワンは左右に打ち分けて攻撃をかわしていくが、ゲーム巧者のスカムルヨが絶妙な飛び出しを見せて早いタッチで抑え込みチャンスを作れば、ギデオンが強烈なスマッシュを叩き込んでいく。最後もギデオンの放ったスマッシュが決まり、一度もリードされることなくギデオン/スカムルヨが21-19として王手をかける。

 第2ゲームに入るとギデオンのスマッシュがネットにかかる、スカムルヨの前衛でのプッシュがバックアウトになるなどしてアッサン/セティアワンがリードする展開になる。10-15と苦しい場面から集中力を高めたギデオン/スカムルヨが怒涛の連続攻撃を仕掛けて追い上げ、18-17と逆転に成功するものの、アッサン/セティアワンに冷静な配球で3連続ポイントを取られ、ゲームポイントを握られてしまう。しかし、スカムルヨが豪快にスマッシュを決めて延長ゲームに持ち込むと、最後はセティアワンのドライブがネットにかかり、23-21でゲーム。ギデオン/スカムルヨが大会史上2組目の3連覇の偉業を達成した。

 試合後スカムルヨは、「3連覇できてよかった。今後も多くの試合がある。東京オリンピックまであと1年なので、あまり意識せずに目の前の一戦一戦を戦っていくだけ。」と淡々と語った。


女子ダブルス
Tokyo2020レースに新たな刺客あらわる。新鋭のキム・ソヨン/コン・ヒヨンが圧倒的な攻撃力を見せてワールドツアー上位大会の初優勝を飾る。

キム・ソヨン/コン・ヒヨン(韓国) 21-12/21-12 松本 麻佑/永原 和可那(北都銀行)

 準決勝で松友美佐紀/髙橋礼華(日本ユニシス)を破り、シンガポールオープン以来の今シーズン2タイトル目を目指す世界ランキング2位の松本麻佑/永原和可那が、初めてダイハツヨネックスジャパンオープンの決勝戦に臨んだ。相手は韓国のキム・ソヨン/コン・ヒヨン。今年に入ってから結成した新鋭のペアだが、Super300のニュージーランドオープンでは2回戦から決勝戦まで日本A代表4組を全て破って優勝を遂げているなど実力は折り紙つき。また、今大会でも2回戦、準々決勝で上位ランカーのペアを撃破してきているなど、勢いに乗っている。

 互いに高い攻撃力を誇る2組の対戦とあって第1ゲーム序盤から激しい攻防のラリーが繰り広げられるが、先に主導権を握ったのはキム/コンであった。コンの強力なスマッシュを起点に、いち早くトップ&バックの形をつくり、ドライブやプッシュを相手のセンターに押し込んで4-4の場面から抜け出し、11-6とリードを奪う。キムは速いラリーの中で揺さぶられても果敢に前へ詰め、しっかりとシャトルを抑えこんで沈めるなど反応の良さを見せ、相手にプレッシャーを与えていく。終始強打を沈めた韓国ペアが21-12と幸先よくゲームを奪った。

 第2ゲーム、何とか取り返したい松本/永原だが、サービス、ネット回りのプレーに精彩を欠くなど、ラリーの組み立てに苦戦を強いられ得意の攻撃パターンに持ち込めない。本来はディフェンスでもポジションを上げて攻撃的に対応できる2人だが、韓国ペアの迫力ある強打の数々に押され、引いた位置での苦しいレシーブが続く。圧倒的なパワーに加え、緩急を使って攻勢を強めるキム/コンは緩めることなく得点を重ね15-7と大量リードを奪う。終盤には永原のスマッシュから松本が詰めて、フロントコートの高い位置でシャトルを捉えるといった、ナガマツペアらしいプレーも垣間見えたが、今日の韓国ペアの出来は更にその上を行っていた。サイドのスペースをうまく使ったリターンで逆にチャンス球を誘い出し、相手コートに沈めるなど強さを見せたキム/コンが21-12として、嬉しいワールドツアー上位グレード大会での初優勝を射止めた。

 優勝記者会見にて「ダイハツヨネックスジャパンオープンという大きな大会で勝てたことが本当にうれしい、2人で顔を合わせると笑みが浮かんでしまう。」とコン・ヒヨンが大きな喜びを語れば、キム・ソヨンも「大きい大会での初めての優勝なのでとても嬉しい。ここで得た自信をもって次週のタイオープンに臨み、優勝を目指していきたい。」と語り、この歓喜を更なるステップアップの糧にしていく姿勢を示してくれた。


混合ダブルス
中国チームの意地、ワン・イルユ/ファン・ドンピンが強いバドミントンを体現し2度目のVを達成

ワン・イルユ/ファン・ドンピン(中国) 21-17/21-16 パラフィーン・ジョーダン/メラティ・デファ・オクタフィアンティ(インドネシア)

 2年ぶりの優勝を目指し、3年連続の決勝戦を戦う世界ランキング2位のワン・イルユ/ファン・ドンピン。中国チームとしてダイハツヨネックスジャパンオープン最終日に残った唯一のペアとして、絶対に負けられない戦いとなる。一方のパラフィーン・ジョーダン/メラティ・デファ・オクタフィアンティは、世界ランキング6位の実力者ながらワン/ファンにはまだ未勝利であり、何としても一矢報いて優勝を勝ち取りたい挑戦者である。

 第1ゲーム、インドネシアペアは相手のお株を奪うかのごとく高速ラリーを展開して互角に渡り合う。中国ペアの強いドライブに対して真っ向から当たっていき、オクタフィアンティが絶妙にラケット面をつくってシャトルを沈めては、ジョーダンの強力なスマッシュにつなげていく。取っては取られて、12-12と接戦模様であったが、ここからワン/ファンの強さが光った。強打の中にも的確なコースへの配球術を発揮し、5連続得点をあげて先行すると、追い上げを許さず、最後はワンがラウンドからストレートスマッシュをライン上に沈めて21-17、中国ペアが見事なゲームメイクで先取した。

 第2ゲームは、ファンがロングサービスのエースショットで鮮やかに先取点をあげて観客の度肝を抜けば、ワンが高いジャンプからドロップショットを沈めて2点目。このリードを一度も追いつかれることなく、ワン/ファンが勝ち方を知っているプレーの数々でポイントを積み上げていく。動き回って、揺さぶられるほどにプレーのつながりがよくなっていき、「相手も強かったが自分たちのプレーができた。(ワン)」「昨日ほど調子は良くなかったが、勝つことを意識して戦えた。(ファン)」という中国ペアは自由自在なプレーで球を着実に沈め、多くの歓声を引き出していく。危なげない試合運びで21-16とし、ワン/ファンが2年ぶりのダイハツヨネックスジャパンオープン制覇を成し遂げた。