大会の見所

大会の見所11 女子シングルス注目選手3

5月のスディルマン杯でチャイニーズタイペイのエースとして登場した戴資穎

戴資穎(チャイニーズタイペイ)
TAI Tzu Ying タイ・ツーイン
世界ランキング1位(6月25日付)

「野性味を帯びる女子シングルスNO.1」

 2016年12月から"ほぼ"世界1位を保持しているチャイニーズタイペイの戴資穎。昨年4月に1週間だけ、日本の山口茜(再春館製薬所)にその座を明け渡したが、ここ数年、もっともコンスタントに勝ち続けている。

 昨年8月にはアジア大会の金メダルも獲得。長年、世界1位にも関わらず、メダルマッチで勝てないことが戴資穎の課題だったが、とうとう悲願を果たし、"金メダルなき世界NO.1"の汚名を返上した。

昨年8月、アジア大会で金メダルを獲得した

 そんな戴資穎の強みは、パワー、そして"対応力"だ。相手が打ってくるショットによって、瞬時に何を返すか判断し、定石にはまらないプレーをする。

 対照的なのは日本のエース奥原希望(太陽ホールディングス)だ。奥原は積み重ねた膨大なデータをもとに戦う。

 これは本人たちも認めるところだろう。じつは2011年、戴資穎が17歳、奥原が16歳のとき、2人はこんな会話を交わしている。

奥原 シングルスで好きな決め方はありますか?

  私は今日の相手はこうだから、こういう組み立てにしてとか一切考えないんです。その場の直感だけでやっています。みんな相手の球筋やクセはこうだからと分析して試合に臨みますが、それだと相手が少し変えてきただけで対応できなくなっちゃう。その場で対応して動くほうが大事だと思っています。

奥原 野性的だなあ。自分は逆で頭を使ってやらないと全然勝てないです。相手の得意なショットをいかに出させないか考えながらやっていかないとボロ負けする…。

2011年9月、17歳の戴資穎(右)と、16歳の奥原は対談で肩を組んだ

 このときから8年が経った。現在、戴資穎は25歳、奥原24歳。当時に比べると、2人の動きはずっと洗練されパワーも増したが、基本的なスタイルは変わっていない。ジュニア時代同様、戴資穎は野生動物のようにコートを自由に走り、奥原は考え抜いた戦術をコートで表現しようとする。高いレベルで異なる個性は磨かれ、どちらのスタイルも魅力的だ。

戴資穎は男子のようにハイバックを軽々とこなす

 そんな2人の対戦成績は拮抗している。7月9日現在、戴資穎が5勝、奥原が4勝。これまでダイハツ・ヨネックスジャパンオープンで優勝したことがあるのも似ていて、戴資穎が優勝したら2012年以来、奥原希望が優勝したら2015年以来、2度目の優勝になる。

 2人が対戦するとしたら準決勝。順当に勝ち進んだから、「野生」のプレーと「理知」のプレーのどちらがまさるか、じっくり見てみるといいだろう。



⦿戴資穎(チャイニーズタイペイ)

■プロフィール 1994年6月20日(25歳)/162㎝57㎏/右利き

⦿RESULTS
'18アジア大会優勝
'18全英選手権優勝
'12ダイハツ・ヨネックスジャパンオープン優勝