大会の見所

大会の見所3 女子シングルス注目選手

陳雨菲(中国)
CHEN Yu Fei  チェン・ユーフェイ
世界ランキング2位(6月18日付)

「王国復権を願うライジングスター」

5月のスディルマン杯では勝負所に勝ち、すっかり中国のエースに成長した

 地元開催のプレッシャーから解き放たれた瞬間、背中から崩れ落ち、感極まった。

 5月のスディルマン杯決勝。第2試合に立った陳雨菲は、日本の山口茜(再春館製薬所)を81分の激闘で下した。感情を出し切って顔を上げたとき、浮かんでいたのは吹っ切れたような表情だ。

 華奢な21歳は、大きな壁を越えて、またひとつ強くなった――。

 昨年までの陳雨菲には、ジュニアの雰囲気が強く残っていた。2016年世界ジュニア選手権で優勝し、シニア入りした翌年には世界選手権で銅メダルを獲得しているから、地力は相当だ。しかし、歴代の中国のエースのような修羅場をくぐってきたような凄みがない。

スディルマン杯の決勝で山口茜を下した陳雨菲

 だから自慢のフットワークでコートを素早く駆けても、最後はもろさを露呈し敗れてしまうことも少なくなかった。2018年までワールドツアーの優勝は11月の福州中国オープンの一度に留まっている。

 しかし、いよいよ殻を破る日はやってきた。全英選手権の準決勝で日本の奥原希望(太陽ホールディングス)を退けたあと、12戦全敗中の戴資穎(チャイニーズタイペイ)に勝った。

 試合前、陳雨菲が心に誓ったのは、「外野の声に惑わされない」ということだ。これまで自信のなさから躊躇の多いショットを繰り出してきたことに敗因を感じていた陳雨菲は、心を乱す雑音をシャットアウト。すると大量リードに成功し、戴資穎にじわじわと迫られた場面も「自信を持って!」と自らを鼓舞し、1、2ゲームとも17本で難敵を振り切った。試合後、陳雨菲は「勝因はメンタルです」と振り返っている。

軽やかにをコートを広くカバ―する足が最大の武器

 今年、全英選手権、スディルマン杯を通し、心身ともに成長した陳雨菲。その胸には、かつて中国が誇った栄華を取り戻したい思いがある。ダイハツ・ヨネックスジャパンオープンには、これまでになかった風格をまとい日本に乗り込んできそうだ。



⦿チェン・ユーフェイ(中国)

■プロフィール
1998年3月1日生まれ(21歳)/171㎝/右利き
⦿RESULTS
'19全英選手権優勝
'18福州中国オープン優勝