大会の見所

決勝 7月28日(日)のカード

世界最高の決戦を見逃すな!

いよいよ7月28日にダイハツ・ヨネックスジャパンオープンの覇者が決まる。来年、東京オリンピックが開かれる武蔵野の森総合スポーツプラザで優勝できたことは、1年後に向けて大きな自信になるはずだ。種目ごとに見どころを紹介していく。

男子シングルス

桃田賢斗(日本)VS ヨナタン・クリスティ(インドネシア)
⦿対戦成績:桃田賢斗が2勝 ヨナタンが1勝

「桃田が2連覇に突き進む雄姿を目撃せよ!」

日本男子シングルス史上、初の2連覇に桃田賢斗(WR1位)が挑戦する。準決勝でインドのB.サイ・プラニース(WR23位)にストレート勝ちした桃田は、「昨日、勝ったのに、今日、ここで負けたら意味がないので」と思い通りに展開した試合を振り返った。ここには世界1位としての矜持と、準々決勝での激戦を無駄にしたくないという思いがある。

世界きってのスピードスター、アンソニー・シニスカ・ギンティング(インドネシア・WR8位)との準々決勝は、どちらに転ぶか分からない90分の死闘だった。1ゲームを延長ゲームで取られるが、2,3ゲームは、ギンティングの速い球回しに対応し、打つタイミングを変化させて逆転勝ちした。試合後、桃田が「立っているのがやっと」というほどの一戦には、勝利への熱い思いがほとばしっていた。

決勝は、昨年、WR15位ながらアジア大会を制した21歳のヨナタン・クリスティ(WR7位)を迎える。昨年は、「急に注目されてナーバスになってしまい、アジア大会直後の日本で1回戦負けしてしまった」が、今年は心の逞しさを増し、すべてストレートで勝ち上がった。もちろん、ここまで来た以上、クリスティも優勝しか見ていない。

「みんなが知っての通り、桃田は守備が完璧で、ラリーもうまく、スタミナがある選手だってことを僕も知ってる。でも桃田に勝ちたいから、明日、自分らしいプレーをしたいと思っている。これから動画を研究して、桃田がどんな場面で連続して点を取られているか、研究するつもりだよ」

もちろん、桃田も準備に余念はない。専門家たちに体をチューンナップしてもらい、対策も練って低い展開がうまいオールラウンダーに対抗するつもりだ。

「自分から足を動かして、シャトルをコントロールできれば、チャンスはできるのかな」(桃田)

そして、準決勝後の記者会見で桃田は強調していた。

「2連覇、むちゃくちゃしたいです」

桃田の技術、体力とともに、勝利を強く求める心も目撃してほしい。


⦿桃田賢斗
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女子シングルス

山口茜(日本)VS 奥原希望(日本)
⦿対戦成績:山口茜が7勝 奥原希望が11勝

「2015年以来の日本決戦。夢のカードが実現」

日本が誇るWエース、山口茜(WR2位)と奥原希望(WR3位)が激突する夢のカードが実現する。2人がダイハツ・ヨネックスジャパンオープン決勝で顔を合わせるのは、2015年以来2回目。このとき社会人2年目の奥原が、高校生の山口にストレート勝ちした。あれから4年経ち、2人の心技体がさらに充実するなかでの決戦だ。

山口は2013年以来2度目のVを目指す

奥原が「いま女子シングルスで一番、調子がいいのは茜ちゃん」と認めているように、絶好調ぶりを見せているのは山口だ。リオ五輪の銀メダリスト、プサルラ・V・シンドゥ(WR5位)との準々決勝、全英チャンピオンの陳雨菲(WR4位)との準決勝はどちらもストレート勝ちだった。球に緩急をつけて相手のリズムを崩しラリーするのは、以前と同様だが、さらに動きの速さも加わった。

「この2週間、いい場面でも悪い場面でもスピードを上げながらプレーできている」と山口が言うほどだから、ショットだけでなく、動きの緩急にも幅が出てきているのだろう。

一方、奥原は苦しい試合を抜けて調子を上げた。準決勝こそストレート勝ちだが、タイのニッチャオン・ジンダポル(WR24位)との準々決勝は81分に及ぶ激戦だった。主導権は握っているはずなのに、「流れを完全につかめず、もやもやして苦しかった…」と奥原は振り返る。

だが、この苦境が奥原にはよかった。「タイトルを獲るときは、こういう苦しい試合が必ずあるもの。このあとも苦しい試合はあると思いますが、私のメンタルの強さで乗り切りたい」。さらに準決勝のあと、山口戦を想定してこんな決意ももらしていた。「泥試合になると思いますが、しっかり我慢していくつもりです」。

この言葉を聞いた山口は冗談を交えて「泥試合になったら奥原さんの勝ちなんで…。こっちは長い試合にならないようにしたいです」と笑っていたが、ラリーをできる早く切りたいのは山口の本音だろう。

奥原が優勝すれば2015年以来2回目

決勝戦に臨むにあたり、責任感の強い奥原はバドミントンファンに向けての決意も口にしている。

「日本の女子シングルスのレベルの高さを、観客の皆さんに見せつけるような試合にしたいです」

この気持ちは「楽しんでもらえる試合をしたい」と日頃、話している山口も同じだ。

最高の試合を日本のファンを見せるための2人の準備は、すっかり整っている。

男子ダブルス

ギデオン/スカムルヨ VS セティアワン&アッサン(インドネシア)
⦿対戦成績:ギデオン/スカムルヨが7勝 セティアワン&アッサンが2勝

「インドネシア対決! 世界最高のマジックを見よ」

激戦の準決勝を勝ち抜き、決勝戦にたどり着いたのは、インドネシアの2ペアだった。世界ランキング1位のギデオン/スカムルヨは、同2位の李俊慧&劉雨辰(中国)をファイナルで下して派手なガッツポーズ。セティアワン/アッサン(WR4位)は、日本のエース園田啓悟/嘉村健士(WR3位)を退け、静かに勝利を喜んだ。

3連覇を狙うギデオン(左)/スカムルヨ

準決勝のラストで対照的な姿を見せたことがそれとなく示すように、両ペアが辿ってきた道のりは大きく異なる。ギデオン/スカムルヨは2015年に組み始めたが、その才能を輝かせたのはリオ五輪後。インドネシアのエースに昇格すると、ワールドツアーでの優勝を連発。昨年10月以降、最多の5勝を挙げ、男子ダブルスの頂点に2年あまり君臨しているフレッシュなペアだ。

一方、34歳&31歳のベテランのセティアワンとアッサンには様々な紆余曲折がある。2013年と2015年の世界選手権で優勝したが、リオ五輪後、ペアを解消。しかし、2018年初旬にふたたびオリンピックをめざし再結成し、3月の全英選手権も制した才能ある2人だ。

アッサン/セティアワンが復帰してからの6対戦は、すべてギデオン/スカムルヨが勝っている。それだけに世界1位が3連覇を遂げる可能性が高いが、これまでの対戦スコアを見ると、多くの試合でアッサン/セティアワンが激しく抵抗したことが分かる。今回の決勝でも思いもよらぬショットや戦術で世界最強のトップ&バックに対抗していくだろう。

とくに注目してほしいのは、スカムルヨとセティアワンの前衛対決。スカムルヨはトップ&バックになる起点を作るのがうまく、セティアワンは要所をミスなく抑えるプレーで悪い戦況を一変させる前衛力を持つ。

どちらも高度な技術を持ち、その化かし合いは最高のマジックを見ている気分にさせられるはずだ。勝敗の行方も気になるが、まず最高速のラリーを心ゆくまで堪能してほしい。


⦿マルクス・F・ギデオン
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⦿ケビン・S・スカムルヨ
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女子ダブルス

永原和可那&松本麻佑(日本)VS 金昭映&孔熙容(韓国)
⦿対戦成績:永原&松本が2勝 金昭映&孔熙容が2勝

「世界きっての攻撃型ペアが対決。激しい打ち合いに期待」 

170㎝&179㎝の長身ペア永原和可那/松本麻佑(北都銀行・WR2位)と、世界ランキングを急上昇させている驚異のペア・金昭映/孔熙容(WR13位)が激突する。攻撃型同士の激しい打ち合いが期待できそうだ。

永原(右)/松本は昨年、世界選手権を制した

準決勝ではどちらのペアも対戦相手に猛打を浴びせた。

永原/松本は、リオ五輪の金メダリスト、髙橋礼華/松友美佐紀(WR3位)と対戦。松友が前、髙橋が後ろという二人の得意な攻めの形をまず封じ、チャンス来たら豪快にスマッシュ。「今日はカットでつなぐのではなく、スマッシュ多めで行きました」と松本が振り返るように、徹底的な攻めで難敵を突破した。

日本対決の横で金昭映/孔熙容も激しい試合を展開していた。対するのは世界ランキング1位の福島由紀/廣田彩花を準々決勝で破った中国の鄭雨/李汶妹(WR15位)。金昭映がネット前に飛び込みゲームメイクして球を上げさせると、待ってましたとばかりに孔熙容が猛打を浴びせた。決勝に進出したことで、5月のニュージーランドオープンで日本3強を下した強さはまぐれではないことを証明したといえる。

決勝戦は、どちらも勝てば初優勝。これまでの対戦は2勝2敗と実力は伯仲している。

世界選手権優勝など永原/松本は大舞台での経験値が高く、正念場に強いだろうが、今ぐんぐんと世界ランキングを伸ばし、試合が楽しくて仕方がないという表情を見せる金昭映/孔熙容の勢いは怖い。日本は、まず金昭映の速いタッチに警戒する必要があるだろう。

永原は「五輪レースが始まってから自分たちらしいプレーを見失っていた。でも、準決勝で髙橋/松友ペアと対戦することで、取り戻せたものがありました」といい、松本は「準決勝で先輩である髙橋/松友ペアから大きな力を受け取ったので、明日に繋げたい」と思いを口にする。

明日は第1シードとして、世界トップのプレーはこうだと、日本のファンに凄みを見せつけてもらいたい。

混合ダブルス

王懿律&黄東萍(中国)VSパラフィーン・ジョーダン&メラティ・デファ・オクタフィアンティ(インドネシア)
⦿対戦成績:王懿律&黄東萍5勝 

「頭脳派とファンタジスタの対決!」

2018年4月から世界ランキング2位を保持する王懿律/黄東萍が、2018年1月からペアを組むジョーダン&オクタフィアンティ(WR6位)と対戦する。もし中国ペアが優勝すれば、2017年以来2回目、インドネシアペアは初優勝になる。

これまで中国ペアはインドネシアペアに5戦無敗だが、「決勝にはかなりプレッシャーがあります」(王懿律)と打ち明けている。昨年の覇者で第1シードの鄭思維/黄雅瓊(中国・WR1位)が準々決勝でまさかの敗戦を喫し、指導陣からの期待が準優勝だった2人の肩にのしかかっている。世界2位として勝て、というのが2人に課せられた使命だ。

挑戦者のジョーダン&オクタフィアンティは、そんな王懿律/黄東萍が頭脳派に見えるという。「鄭思維/黄雅瓊はパワーとスピードで勝負するタイプですが、王懿律/黄東萍は戦術が勝負するタイプ。いろいろ考えて、配球してきますね」というのはジョーダンだ。

一方、中国ペアは、ジョーダン&オクタフィアンティについて「自由自在なペア。基本に収まらないプレーをするので、どこへ球を打つか、なかなか分からない」と話している。たしかに準々決勝では瀬戸際でトリッキーなショットを連続して、瀬戸際を切り抜けている。ファンタジスタといえる意外性のある球がその武器だ。

明日の決勝は、インドネシアがその自由奔放さで中国の戦術を機能させないショットを連続させられるかが勝負。2ペアの対戦はファイナル勝負も多く、決勝戦もおもしろい内容になりそうだ。