観戦記事
9月16日(日)決勝

男子シングルス決勝戦

充実のV、世界チャンピオン桃田が新たな栄冠を掴む

桃田 賢斗(NTT東日本) 21-14 / 21-11 コシット・フェトラダブ(タイ)

今年の世界選手権優勝により、名実ともに世界のトッププレーヤーとなった桃田賢斗が「ジュニア時代からの憧れの舞台」というジャパンオープンの決勝戦に登場、会場に駆けつけた満員の観客の声援を受けて、同い年のコシット・フェトラダブと対戦した。フェトラダブにとっては初の上位大会の決勝戦であり、その勢いに注目が集まった。

サービスからの3打目を桃田がスマッシュで沈め幕を開けた第1ゲーム、互いに攻めを強く意識したラリーが展開される。徹底したスマッシュ攻勢でここまで下克上を果たしてきたフェトラダブは、高い跳躍力を存分に発揮してシャトルに飛びつき強打を連発する。しかし今の桃田にカバーできない範囲はない。13-12の場面でのフェトラダブの猛攻をことごとくレシーブして得点をあげると、リターンのタッチを早めて相手を揺さぶっては強力なスマッシュを決めて突き放していく。最後は相手の渾身のジャンピングスマッシュを素早い反応でクロスリターンし、これがエースショットとなる。21-14で桃田がゲームを奪取した。

第2ゲーム、フェトラダブは丁寧に低いラリーを展開する。それがうまくはまり、序盤は対等に進んでいくが、得意の攻めの場面では力を発揮しきれない。準決勝までは面白いように決まっていたリアコートからのスマッシュも、ことごとく桃田にリターンされ厳しいラリーが増えてくることで、卓越した体力にも限界が見えはじめる。好機を見逃さなかった桃田は14-11の場面から、次々にスマッシュを沈める怒涛アタック、相手に何もさせない圧倒的なプレーで7連続得点を奪い、21-11。桃田賢斗が日本人として始めてジャパンオープン男子シングルスの覇者となった。

日本におけるワールドツアー、歓喜の初優勝を遂げた桃田は「一時はこの場所に立つこともできないと思っていたが、今こうして立てて優勝できたことは素直に嬉しい。東京オリンピックで使う会場での初の大会で優勝できたことで、縁起のいい体育館になったと思う。」と喜びを語りつつも、「あまり先を見すぎずに、1つ1つ先の試合にしっかり取り組んでいきたい。」と、気を引き締めてさらなる高みを目指していく心意気を語った。




女子シングルス決勝戦

ファイナルゲームで加速するマリン、現・世界女王が強さを見せた2連覇

キャロリーナ・マリン(スペイン) 21-19 / 17-21 / 21-11 奥原 希望(日本ユニシス)

日本のエース奥原希望が決勝の舞台で、オリンピック金メダリストで、今年3度目の世界選手権女王に輝いたキャロリーナ・マリンとの対決に挑んだ。戦績では6勝4敗と奥原が勝ち越しているが、マリンと最後に対戦したのは昨年8月の世界選手権のため、どんな決勝戦になるのか観衆の期待は高まっていた。

第1ゲーム序盤は、両者ともに探り合う様なラリーを展開し、点数を交互に重ねていった。奥原は、スピードと我慢強さを、マリンはパワーと精度で、互いに流れを相手に渡さなかった。それでも、要所要所で連続得点を獲得した奥原が先に11点に届いた。その後も奥原は集中力を切らすことなく試合を進め、19―16までリードした。しかし、そこからマリンが意地を見せ、持ち味のパワーで16-19から5連続得点を奪い、一気にゲームの逆転奪取に成功した。

第2ゲームも中盤まではお互いに離されることなくゲームを進めていく。試合が動いたのは16-17でマリンリードからだった。マリンの集中が切れたのか、ミスを連発し、1ゲーム目とは逆に、奥原が5連続得点で第2ゲームをものにし、最終ゲームに望みをつないだ。

最終ゲームはマリンの1人舞台となった。最終ゲームにも関わらず、マリンのスピードとパワーは共に健在だった。マリンは終始攻撃的に攻め、奥原は防戦を強いられた。奥原は我慢強くレシーブするが、マリンに追い詰められ得点される場面が目立った。1-3から1-10まで7連続ポイントを奪われるなど、マリン主導となったこのゲームは、21-11でマリンに軍配が上がり、大会2連覇を達成した。

マリンは会見で、「2年後のオリンピック会場で優勝できたことはとても嬉しく、意味のあることだと感じています。」と述べた。

一方の奥原は、「第1ゲームは自分のペースで進めることができたが、終盤でマリン選手の攻撃に撃ち抜かれてしまった。第3ゲームでもスピードが落ちなかったマリン選手に対策をできなかったことが敗因。」と振り返った。しかし、「この試合は、学びの多い試合であったため、まだまだ伸び代があると感じている。」と前向きに語った。




男子ダブルス決勝戦

怒涛のアタック、湧き上がる歓声。ギデオン/スカムルヨが圧巻の試合で連覇達成

マルクス・F・ギデオン/ケビン・S・スカムルヨ(インドネシア) 21-11 / 21-13 リー・ジュンホゥイ/リゥ・ユチェン(中国)

ジャパンオープンの決勝戦にふさわしい、世界ランキング1位(ギデオン/スカムルヨペア)と2位(リー/リゥ ペア)の対戦。これまでの対戦成績はインドネシアペアの7勝1敗とランキング以上に差があるが、両ペアとも今大会では調子を上げていて、白熱した試合が期待された。

第1ゲーム、立ち上がり両ペアとも粗さが見え、短いラリーが続く。積極的に速い球で押し、攻めに持っていくギデオン/スカムルヨとは対照的に、リー/リゥはその球をミートしきれずに、安易に守りに転じてしまう。序盤から圧巻の攻撃を見せるインドネシアペアに会場も盛り上がり、攻めのターンになる度に観客は歓声を上げる。11-6で折り返すと、その後はギデオン/スカムルヨの独壇場。会場の雰囲気もリー/リゥにプレッシャーをかけ、5連続ポイントで一気に突き放す。その後、徐々に適応してきた中国ペアが、巻き返しを図るが、サービスミスで流れに乗れず。21-11の大差でギデオン/スカムルヨが第1ゲームを制す。

第2ゲームは接戦になる。第1ゲームで球に慣れた中国ペアは、インドネシアペアの低い攻撃に応戦する。お互いに連続得点を奪うなどして、得点を重ねるが、サービス回りでのミスが特に目立った中国ペアがインドネシアペアにリードを許し、11-9でインターバルを迎える。後半何とか自分たちのペースに持っていきたい中国ペアだったが、上手くチャンスをものにできず、インドネシアペアが連続ポイントで波に乗る。金髪が特徴のギデオンが鋭い読みを発揮し、中国ペアを圧倒。途中でストリングが切れ、ラリー中にラケットを交換するパフォーマンスも見せ観客を盛り上げる。スマッシュと見せかけたドロップで中国ペアからマッチポイントを奪い取った20-13の場面では、会場全体が日本語の「あと一点!」コールに包まれ、最後はこの試合一迫力のある攻撃でインドネシアペアが試合を締めくくった。

試合後は、ギデオン/スカムルヨは「メインスポンサーでお世話になっているYONEXの本拠地で優勝できて本当に嬉しい。会場にインドネシアファンが大勢いると思った。まだツアーは続くが一試合ずつ全力で取り組みたい。」と語り、王者の立場にも油断は見せなかった。




女子ダブルス決勝戦

最高峰の決勝戦。福島/廣田が総合力で押し切りホーム初優勝を果たす。

福島 由紀/廣田 彩花(岐阜トリッキーパンダース) 21-15 / 21-12 チェン・チンチェン/ジャ・イーファン(中国)

世界ランキング1位の福島由紀/廣田彩花組と2位のチェン・チンチェン/ジャ・イーファン組による女子ダブルス決勝戦。このジャパンオープンが格式高い大会であることを証明するような好カードによる、白熱の決勝戦が行われた。通算では福島/廣田が勝ち越しているが、直近の対戦だったアジア大会の個人戦ではチェン/ジャが勝っており、その勝負の行方に注目が集まった。

第1ゲーム、この対戦にふさわしく高いレベルの攻防が繰り広げられる。数々の強敵を打ち破ってきたお互いのオフェンス力、ディフェンス力が真っ向からぶつかり、一進一退の展開、それも長いラリーが続いていく。中国ペア14-13の場面では、ジャ・イーファンが怒涛のスマッシュ連打で球を沈め、一時はアウト判定となったもののチャレンジ成功で15点目。その瞬間、チャン・チンチャンが大きく雄叫びをあげたことが、勝負の壮絶さを物語っている。しかし、福島/廣田はこのビハインドでも動じなかった。クリアで確実に相手をリアコートに押し込んでは球をコースよく沈めるほか、相手の甘くなったドライブリターンをスマッシュで決めるなど、勝負所での強さを見せた福島/廣田が8連続得点で21-15としゲームを先取した。

第2ゲームに入ると、福島/廣田は今大会を通して見ても抜群のコンビネーションを見せる。福島が相手のリターンコースを限定させるようなスマッシュを的確に放ち、前衛の廣田がそれに応えて早いタッチで球を沈めていく。また、ロングサービスを多用し、相手に打たせたところから鋭いドライブリターンを切り込んで甘い球を誘発し、ミドルコートからスマッシュを突き刺すなど、11-6と順調に得点を重ねて折り返す。反撃に転じたい中国ペアであったが、日本ペアの猛攻を前に、勝負強いチェン・チンチェンの脚が止まる場面が増え、糸口を見いだせない。ジャ・イーファンの必死の強打もネットに嫌われることが増える。「アタックだけなら中国勢の仲間の方があると思うが、日本ペアはオールマイティで強かった。」と言わしめるほど、攻守で総合的な強さを見せた福島/廣田がラリーを圧倒し、21-12としてジャパンオープン初優勝を果たした。

見事チャンピオンの座を射止めた福島/廣田ペア。福島が「長い試合だったが、勝ててホッとした。会場の応援が力になった。」と安堵の気持ちを語れば、廣田は「前回負けた相手にストレートで勝ててよかった。これからも対戦が続いていく相手だと思うので、対策を練られても勝てるように頑張っていきたい。」と、世界1位を盤石なものにするための強い意志を表した。

一方惜しくも準優勝となったチェン/ジャは「会場の雰囲気が相手を後押ししていたとは思うが、互いにベストパフォーマンスだったと思う。福島/廣田は力が安定していた。」とチャンピオンを称えた。




混合ダブルス

驚異のゲームメイク、トップペアが確実な試合運びで同国対決を制す。

ジェン・シーウェイ/ファン・ヤチョン(中国) 21-19 / 21-8 ワン・イルユ/ファン・ドンピン(中国)

混合ダブルス決勝戦は中国同士の対決となった。ジェン/ファンは昨年11月のペア結成ながらここまでの勝率9割を超え、破竹の勢いで世界ランク1位となったペアであり、対するワン/ファンは現在世界ランク2位、昨年のジャパンオープンの覇者で2連覇がかかっている。

第1ゲーム、序盤から両ペア一歩も引かない展開となる。ジェン/ファンは細かなタッチでワン/ファンを崩していく。ワン/ファンも負けてはいられない。ファン・ドンピンの機敏で繊細なタッチでサービス回りからポイントを取る。拮抗しているなか、先に11点に到達したのはジェン/ファン。11-9とリードで折り返すが、対するワン/ファンも負けじと2点を取り返し、11-11とする。そんな中で第1ゲーム後半の17-16で、ジェン/ファンは好レシーブを連発し、観客を沸かせる。しかし、20-19で先にジェン/ファンがゲームポイントを握ると、最後は相手のファン・ドンピンのヘアピンが浮いたところを押し込んで1ゲームを奪った。

第2ゲームは序盤からジェン/ファンが攻勢を確立し、4-2とリードを奪い抜け出す。ワン/ファンは1点ずつ取り返していくが、すぐに取り返されてしまいなかなかこの差を詰めることができない。インターバルを迎える頃には7-11で点差は4点差に広がっていた。そこからジェン/ファンは高い集中力を見せ、7連続ポイントを取り、18-7とする。ワン/ファンは必死に1点を奪うが、この1点が精一杯で、最後はファン・ドンピンのレシーブがコート奥にアウトになったところでゲーム、ジェン/ファンが王者に輝いた。

試合後、敗れたワン/ファンは「1ゲーム目が惜しいところまできただけに悔しい。自分たちには今後もチャンスがあると思うので、頑張っていきたい。」と、悔しさと同時に今後の意気込みを見せていた。一方、勝ったジェン/ファンは「今日は良いパフォーマンスを出せた。この優勝した勢いを中国オープンでも出していきたい。」と、既に先を見据えていた。トップを争う両ペアの今後の活躍から目が離せない。