観戦記事
9月11日(火)男子シングルス、女子シングルス、混合ダブルス1回戦
男子シングルス
好調を維持し、ファンの声援にも後押しされて快勝!
西本拳太(トナミ運輸)21-16 / 21-10 リー・チェックユー(香港)
先月のアジア大会で3位入賞を果たした世界ランキング10位の西本は初戦で香港のリー・チェックユーと対戦した。
第1ゲーム序盤からしっかり足を動かし、ネット前の球を高い位置で捌いてラリーを支配していた。相手もエースショットを決め、なかなか点差を広げることができなかったが、インターバル後も攻めの手を緩めることなく、鋭いスマッシュで得点を重ねた。
第2ゲームは粘り強いプレーで相手の強烈なスマッシュを拾い、確実に得点を重ねる。後半も特に崩れることはなく、ラウンドからのクロスカットでノータッチを奪う場面も見られた。ファンの声援の後押しもあり、最後は8連続得点で快勝した。
試合後、西本は「緊張していたが、第1ゲームをとれたことで気が楽になった。スマッシュが速い相手だったので意識してプレーした。」とコメントした。次の試合での意気込みを聞かれると、「今回みたいに攻めすぎず、作戦をしっかりと立てて臨みたい。東京五輪の為にも今大会で1つでも多く勝ちたい。」と堂々と話した。
桃田、日本人男子初Vに向けて発進!
桃田賢斗(NTT東日本)21-9 / 21-10 アンダース・アントンセン(デンマーク)
3年ぶりに戻ってきた今大会の初戦。日本人男子初優勝が期待される世界ランキング4位の桃田賢斗が2018年8月の世界選手権で苦戦した世界ランキング16位のアンダース・アントンセンと対戦した。
第1ゲームの序盤から「最初からスピードを上げていった」という桃田がカットやクリアでアントンセンを四隅に動かし、ラリーの主導権を握る。14-9から7連続得点で第1ゲームを先取する。第2ゲームも連続ポイントを重ね、安定した試合運びで危なげなく勝利。
試合後、桃田は「風もなく、天井も高すぎずプレーしやすかった。先を見すぎず、1試合ずつ丁寧に取り組みたい。」と意気込みを語った。
世界選手権8強の常山、悔いの残る敗戦…
チョウ・ティエンチェ(チャイニーズ・タイペイ)21-11 / 21-10 常山幹太(トナミ運輸)
2018年8月の世界選手権では8強入りを果たし、今大会でも上位入賞が期待されている常山幹太が世界ランキング5位のチョウ・ティエンチェと対戦した。
第1ゲームの立ち上がり、チョウ・ティエンチェの鋭い決め球と自分からのミスが重なり、チョウ・ティエンチェにペースを握られてしまう。チョウ・ティエンチェのクロスショットに対応しきれず、21-11で落としてしまう。
第2ゲーム、悪い流れを断ち切り反撃を狙いたい常山だったが、サイドアウトが目立ち、得意なラリー戦に持ち込めない。後半、球のスピードを上げて流れを変えようと試みるが、相手も動きのスピードを上げて対応された。最後まで見せ場を作ることができず、21-10で初戦敗退。
試合後、常山は「試合前はラリーをしようと思っていたが、思った通りのプレーができなかった。自分からのミスが多く、自分の力を出し切れなかった。」と悔しそうに語った。東京五輪について聞かれると、「まずは目の前の試合に向けて頑張りたい。来週も試合があるので気持ちを切らさずに望みたい。」と話した。この悔しさをバネにさらなるレベルアップに期待したい。
レジェンド リン・ダン、貫禄のあるプレーで若手を下す!
リン・ダン(中国)16-21 / 21-19 / 21-10 カンタフォン・ワンチャロン(タイ)
10年近く絶対王者として君臨してきたリン・ダン。来月で35歳になるその肉体は衰えを知らず、今年で4度目のDYJO制覇を狙う。初戦は世界ランキング20位の若手、19歳のカンタフォン・ワンチャロンと対戦。
第1ゲーム、自分のミスとカンタフォン・ワンチャロンの鋭いショットに苦戦。点差はあるものの焦る様子もなく、コートの感覚を確認するようなプレー。後半連続得点で追い上げを見せるもカンタフォン・ワンチャロンに1ゲーム先制を許す。
2ゲーム目も立ち上がりから落ち着いたプレー。徐々に感覚を掴み11-6でインターバルを折り返すと、後半は少しペースを上げ、攻める展開が増える。相手にスマッシュでノータッチを取られる場面もあったがリードはさせずゲームはファイナルへ。
ファイナルゲームは立ち上がりからミスの少ない安定したプレーでリードを作る。相手のコースを突くスマッシュにペースを乱されたが、すぐに立て直し11-8で折り返す。インターバル後はこれぞ本来のリン・ダン!というような早いタッチでリードを広げ、最後は5連続ポイントで圧倒。21-10で78分の試合を制した。
試合後、「第1ゲームはまだ会場に慣れず、相手も若くて調子のよい状態だった。第2ゲームで自分のペースを作り、第3ゲームは気楽にプレーできた。」と語った。東京五輪について聞かれると、「もし出ることができれば5度目の五輪になるが、全力で頑張って金メダルを狙いたい。」とリン・ダンらしい強気なコメントを残した。
ファイナルの延長ゲームに及ぶ激闘は韓国のエースに軍配
ソン・ワンホ (韓国) 17-21 / 21-15 / 22-20 坂井 一将 (日本ユニシス)
日本の男子シングルス勢最年長の坂井は1回戦、元世界ランキング1位の強敵、ソン・ワンホ(韓国)と対決した。
第1ゲームは高い身長を生かした角度あるショットで球を沈め、素早く前に詰める坂井得意の試合運びが型にはまり8連続ポイントで13-8とし、そのまま逃げ切って21-17で坂井が先取する。
第2ゲーム、ソン・ワンホが粘りのレシーブで意地を見せる。攻撃を封じられリズムを崩した坂井は徐々に点差を広げられ、21-15で勝負はファイナルゲームにもつれ込む。
お互い一歩も譲らず始まったファイナルゲーム。体力的に苦しい中、得意のラリーでお互いに5連続ポイントを奪い、13-12と坂井がリードをするが、一歩も譲らない両方は終盤の20-20までシーソーゲームの接戦を繰り広げる。スピードが落ちなかったソン・ワンホに対して、坂井も最後まで食らいつくも最後はヘアピンがネットを越えず、22-20でソン・ワンホの勝利となった。
試合後、坂井は「この大会に標準を合わせていただけに今回の負けは悔しい。競った場面で攻め急いでしまった。つなぐ意識が足りず、それが今回の敗因だと思う。」と語った。
女子シングルス
日本女子シングルスの2トップは上々の勝ち試合でファンの声援に応える
奥原 希望(日本ユニシス) 21-13 / 13-12× チュン・ガンイ(香港)
山口 茜(再春館製薬所) 21-18 / 21-12 パイ・ユーポ(チャイニーズ・タイペイ)
センターコートでの第2試合、第3試合を戦ったのは、それぞれ日本が誇る女子シングルスの2大エースである奥原希望と山口茜。日本のファンの前で共に勝利を掴んだ。
先に登場した奥原はチュン・ガンイと対戦した。柔らかなラケットワークを存分に発揮して相手を惑わし、コーナーを丁寧に突いたラリーで優位に立つと、第1ゲームを21-13と危なげなく奪取した。
第2ゲームに入ると「シャトルが走らなかったのと、風を感じた」と言う奥原に対し、チュンは力のこもった強打を連発し12-9とリードを奪う。しかし、徹底的にラリーで対抗する奥原のクリアに粘り強く対応していたところ、コートで足を引っかけて転倒。処置を経てプレーを再開したが、やはり動ける状態ではなく、13-12と逆転を許したところで棄権を申告し、奥原の勝利となった。
続いて登場した山口はパイ・ユーポとの一戦。山口は素早いシャトルにアプローチし、自在にショットを操り得点を重ねていく。特にフォアサイドのストレートスマッシュはライン際へと精度よくエースショットとなり、一際大きな歓声を受ける。
第1ゲームを淡々と21-18で奪うと、第2ゲームは後半にギアチェンジをし、スピード、パワー、コントロールのあらゆる面で相手を圧倒する。最後はスマッシュを決めて21-12と完勝。「初戦にしては足も動いていたし、ミスも少なく、自分らしいプレーでいい出だしの試合ができた。」と語る通り、幸先の良い初戦となった。
タイの国民的ヒロイン、光る勝負勘でファイナルゲームを制す。
ラチャノック・インタノン(タイ) 17-21 / 21-9 / 21-15 三谷 美菜津(NTT東日本)
世界ランキング4位の元世界女王、ラチャノック・インタノンが日本の三谷美菜津との1回戦に臨んだ。三谷は現在ナショナルBチームのメンバーであるが、直近のBWFワールドツアーであるスペインマスターズ(Super300)で優勝しており、勢いを活かしたいところだ。
第1ゲーム、積極的なゲームを支配したのは三谷。素早いタッチで相手を翻弄し、11-3でインターバルを迎えるなど快調な滑り出しを見せる。左右に細かく揺さぶりをかけ、インタノンの追い上げを制し21-17でゲームを先取した。
第2ゲームに入ると、インタノンが持ち前の攻撃力で三谷を圧倒する。スライスショットを有効に繰り出して相手を崩し、伸びやかなストロークでスマッシュを打ち込んで決めていく。インタノンのペースに対して三谷はシャトルコントロールを乱してしまい、粘りを発揮できない。終始攻めのラリーを展開したインタノンが21-9として鮮やかにゲームを奪い返した。
迎えたファイナルゲーム、決定力で上回るインタノンが先行し、三谷が追いかけていく展開で接戦模様となる。互いに運動量が増えてのラリーが展開されるが、随所のここぞという場面で、ショットの精度が相手を上回ったのはやはりインタノン。追いつかれても一度もリードさせることなく、21-15として2回戦への進出を決めた。
一戦一戦を楽しむバドミントン!危なげないゲームメイク
佐藤 冴香(ヨネックス) 21-7 / 21-11 リー・チャーシン(チャイニーズ・タイペイ)
世界ランキング16位の佐藤は、タイペイの世界ランキング35位のリー・チャーシンと顔を合わせた。過去の対戦成績は2-0と佐藤にとっては、相性のよい相手となった。
2020東京オリンピックの会場となる本体育館について、「横風があるぐらいで、天井の高さも気にならず、伸び伸びとプレーできた。よい感じに力が抜けてリラックスできていたし、足も動いていた。」という佐藤が、序盤から素早いタッチで相手を動かし主導権を握る。落ちついたプレーで21-7とする。
第2ゲームも佐藤が有利に試合を進めていく。佐藤の代名詞とも言えるサウスポーからの強打のスマッシュを見せることなく、21-11と危なげない展開で26分のゲームを締めくくった。
試合後、「インドネシアオープン(2017年6月)で優勝してこれからというところでなかなか勝てずに勝ち急いでしまっていた。今大会は目標を置かずに一戦一戦リラックスして楽しもう。」と笑顔で話した。2回戦は奥原希望(日本ユニシス)と日本人同士の対戦となる。「できれば海外選手と対戦したかったが、お互いにいいプレーをして盛り上げていきたい。」と語った。
明暗分かれた追うものたち、大堀は抜群のアタックで快勝
大堀 彩(トナミ運輸) 21-14 / 21-10 イップ・プイイン(香港)
キャロリーナ・マリン(スペイン) 21-7 / 21-12 川上 紗恵奈(北都銀行)
同じA代表として2大エースを追いかけ、ワールドツアーを戦う大堀彩、川上紗恵奈の試合がたて続けに行われた。
今年のワールドツアー転戦の中で、安定した戦いぶりを身につけてきた大堀は、格下である香港のイップ・プイインと対戦した。この試合、大堀は相手のショット、ラリースピードに完全にタイミングが合っており、自由自在にテンポの良い攻撃に転じる。
終始攻めの形を保った大堀が21-14、21-10と相手を寄せ付けず、35分での圧勝劇となった。
一方、ワールドツアーで苦戦が続いている川上は、オリンピック金メダリストのキャロリーナ・マリンと対戦。マリンの長いリーチを生かした速攻をしのぐことができず、第1ゲームは7点におさえ込まれてしまう。
第2ゲームは川上も持ち前のスピード低く速いラリーを展開し、突破口を見出し得点につなげていくが、マリンほどの実力者を脅かすまでには至らなかった。圧倒的な攻撃で上回ったマリンが21-12として、ゲームカウント2-0の快勝で2回戦進出を決めた。
日本に立ちはだかる高い壁、プサルラが髙橋の挑戦を退ける
プサルラ・V・シンドゥ(インド) 21-17 / 7-21 / 21-13 髙橋 沙也加(日本ユニシス)
国際大会で幾度となく日本選手の前に立ちはだかってきたインドのプサルラ・V・シンドゥは、今年に入ってからシングルスでの対日本選手8勝2敗と、179㎝の身長に違わぬ高い壁となっている。そんなプサルラに対し、7月にシンガポールオープン(Super500)、秋田マスターズと2週連続優勝を果たすなど成長著しい髙橋沙也加が挑んだ。
第1ゲーム、ゲームの流れをつかむとともに会場を驚かせたのは髙橋沙也加。開始早々にトップスピードでプレーし、積極的にスマッシュを打ち込んで次々に決めていく。16-8と大量リードで迎えた後半であったが、ここから髙橋の型に順応したプサルラが精度とスピードを上げて反撃する。落ち着いて対応したい髙橋だったが、ついていくことができずにミスも増え、プサルラに11連続得点を許してしまう。結局21-17でプサルラが逆転のゲーム先取となる。
第2ゲームに入ると、髙橋はスライスショット、スマッシュの緩急を巧みに交えた組み立てと素早く鋭いネットプレーで再度リードを奪い、優位を保って進めてく。「うまくプレーされたことで自分でもミスしてしまった。」とプサルラが認めたように、戦術とプレーがうまくはまった髙橋が21-7として、ゲームと取り返した。
迎えたファイナルゲーム、先行したのはやはり百戦錬磨のプサルラだった。「この会場の風に対しての修正ができた」という通り、本来の鋭いショットの数々で追い込み、攻め急ぐ相手のミスを誘う。「第3ゲームにトップ選手との違いを感じた。」と髙橋に言わしめたプサルラは、終盤になるほどにショットの威力を増し、21-13として厳しい試合を勝ち切った。
混合ダブルス
体格差をものともせず、スピードと運動力で圧倒
保木 卓朗(トナミ運輸)/米元 小春(北都銀行) 21-10 / 21-15 ニクラス・ノア/サラ・ティゲセン(デンマーク)
世界ランキング99位の保木/米元が世界ランキング16位のミックスダブルスでも定評のあるデンマークのペア、ニクラス・ノア/サラ・ティゲセンと対戦した。保木/米元はそれぞれ男子ダブルスと女子ダブルスを専門としているため、このペアリングでの出場はマレーシア、インドネシア、タイに続いての4回目の大会となる。また、このペアとはインドネシアオープン(2018年4月)で対戦し、負けている。
第1ゲームから保木/米元は素早いタッチで相手のミスを誘い、11-2と大量リードを奪い、主導権を握る。米元の男子のスマッシュにも動じないレシーブと前衛での巧みなゲームメイク、保木の強打と豊富な運動量で点数を重ね、結局は21-10で奪う。
第2ゲームの出だしは、お互いに点数を取り合う。185㎝のニクラス・ノアと172㎝のサラ・ティゲセンの長身を活かしたデンマーク勢らしい角度あるスマッシュ、手足のリーチを武器に活路を見出そうとするも、日本ペアは劣る対角を武器に変え、小回りの良さとスピードを活かした連続攻撃で反撃を許さない。結局は、21-15とストレート勝ちを収め、インドネシアオープンのリベンジを果たした。
勝負所での冷静なプレーが光る、お互いの持ち味を出し切る!
金子 祐樹/松友 美佐紀(日本ユニシス) 23-21 / 21-15 ルー・チンヤオ/フー・リンファン(チャイニーズ・タイペイ)
ペアを組み始めてまもない金子/松友がチャイニーズ・タイペイのルー・チンヤオ/フー・リンファンと対戦した。
第1ゲーム、金子/松友は巧みな球回しでフー・リンファンを後衛に追い込み、チャンスで金子がスマッシュを決めていくなどして、8-5とリードを奪う。一方のチャイニーズ・タイペイは我慢強くラリーしてチャンスを作ってルー・チンヤオの190㎝長身からのスマッシュを軸に必死に食らいついていく、13-13となる。お互いに点を取り合い、チャイニーズ・タイペイにゲームポイントを握られてしまう。しかし、さすが松友と言うべきか、前衛でのゲームメイクやレシーブ力が安定しており、相手のミスを誘い前衛で決めるなどして23-21と逆転する。
第2ゲームは、松友が前衛で球を作って、金子が切れ味のあるスマッシュで決めるなど6連続ポイントで12-8とすれば、松友の相手の虚を突くロングサーブやプッシュなどで再度6連続ポイントを奪い、勢いそのままに21-15と2回戦進出を決めた。
試合後、松友はペアの金子について、「(ペアを組んで間もないため)慣れないところはあるが、面白い球を打てる。(お互いの共通点は)お互いに熱くなることはない。」と話せば、金子は「ペアでの練習が少ない中、勝てたから相性はいいです。」と話した。
なお、混合ダブルスに出場している日本ペアは3つであるが、全英選手権優勝の渡辺勇大/東野有紗(日本ユニシス)は相手棄権により勝ち上がりとなった。