観戦記事
9月12日(水)男子ダブルス、女子ダブルス1回戦

男子ダブルス

自分たちのプレーを貫き、勝利。大金星で大きな自信!

保木 卓朗/小林 優吾(トナミ運輸) 21-14 / 21-18 リュウ・チェン/ツァン・ナン(中国)

世界ランキング20位で日本男子ダブルスの次世代を担う保木/小林と世界ランキング4位でリオ五輪男子ダブルス金メダリストのツァン・ナンと若いリュウ・チェンのペアが対戦した。中国の男子ダブルスと言えば、強いフィジカルと強烈なスマッシュというイメージであるが、リュウ・チェン/ツァン・ナンペアはレシーブから勝機を探る守備型のペアである。一方の保木/小林は、所属チームの先輩である園田啓悟/嘉村健士(トナミ運輸)同様、ノーロブスタイルを得意として、保木が司令塔として前衛でゲームを作り、小林の強打を引き出す攻撃的なスタイルである。対照的なプレースタイルのペアがどう戦うか注目が集まった。

第1ゲーム、「試合前、相手のビデオを見ると相手の強いところが印象に残ってしまうので、見なかった。自分たちのプレーに集中することを意識した。」と保木が振り返ったように、程よく力が抜けていい動きを見せた保木/小林が、得意の攻撃で7連続ポイントのスタートダッシュを見せる。連続得点で出鼻を挫かれた中国ペアは動きに精彩を欠き、本来のレシーブでの粘りや切り返しが見られない。勢いに乗った保木/小林は早いタッチで左右に打ち分けて強打で得点を重ね21-14でゲームを奪う。

第2ゲームは、点の取り合いになるが、リュウ・チェンの強打を有効打に中国ペアの6連続ポイントで11-14と点差を広げられてしまう。しかし、「レシーブの精度が高かった。」と小林が言ったように、崩れることなく粘り強くリターンしチャンスを狙う。結局は保木/小林が粘りのレシーブで相手のミスを誘い7連続ポイントで逆転し、21-18と大金星を挙げた。

試合後、小林が「勝てない時期が長かったので、今回の勝利は大きな自信になった。」と話せば、保木は「今日は久しぶりに勝ったので、喜び方を忘れてしまった。」と笑顔で語った。




準優勝から一転…決めきれなかった悔しさ

へ・ジティン/タン・チャン(中国) 13-21 / 21-19 /21-17 井上拓斗/金子祐樹(日本ユニシス)

男子ダブルスとして昨年大会初の決勝進出を果たした世界ランキング7位の井上/金子が世界ランキング18位のへ・ジティン/タン・チャンが対戦した。井上/金子はこの大会で準優勝を果たしてから、インドネシアオープン準優勝、ドイツオープン優勝と結果を残しているだけに昨年を上回る結果に期待が寄せられる。

第1ゲーム、スピードで上回った井上/金子が有利に試合を進めていく。早いタッチで追い込んでは、チャンスを金子がスマッシュ、井上が前衛で決める得意のパターンで点を重ねていく。10-9と詰め寄られるも金子がフォア、バック、ボディへとスマッシュを打ち分けて決めるなどして、4連続ポイントで引き離す。その流れで21-13と一度もリードを許すことなくよい流れで1ゲームを奪う。

第2ゲームはお互いに点を取り合う接戦になる。井上/金子のテンポ良い展開に慣れてきた中国ペアに高い位置でシャトルをとらえてしまい、守りの展開が多くなってしまう。レシーブ力がここ数年に比べて格段に安定感が出てきたものの、鍛え上げられたフィジカルから放たれる強烈なスマッシュの連打に押され始めてしまう。井上が素早く前に入って攻めの形を作って喰らいつくが、最後は中国ペアのパワーに押し切られ19-21と奪われてしまう。

ファイナルゲーム、中国ペアの強打は衰えず、序盤に4連続ポイントを奪われ6-11と苦しい展開となる。井上/金子は守る時間が長く、我慢のレシーブで攻めの機会を作って喰らいつくが、序盤の点差を覆すことはできず、17-21と悔しい初戦敗退となった。

試合後、井上が、「今日の試合は2ゲーム目で射止めるべきものだった。ファイナルゲームは集中力が途切れてしまった。プレーはいつも通りのものだったが、内容的には良かったとは言えないものだった。1試合でも多く日本人のお客さんの前でプレーをしたかったが残念な結果になってしまった。」と話せば、「日本開催の大会では一番大きな大会であっただけに残念な気持ちでいっぱい。」と金子が語った。




会心の勝利、ファンの声援と共に安定したプレーを見せる

園田 啓悟/嘉村 健士(トナミ運輸) 21-12 / 21-17 サトウィクサイラジ・ランキレッディ/チラーグ・シェッティ(インド)

8月の世界選手権で銀メダルを獲得した、世界ランキング3位の園田/嘉村は、サトウィクサイラジ・ランキレッディ/チラーグ・シェッティと対戦した。

第1ゲーム、気合い充分な様子の園田/嘉村は相手のシャトルをしっかりとコーナーに返し、着実に点数を重ねていく。それに対し、インドペアは園田/嘉村のボディへのドライブや低いロブで返球し対応する。12-8と、接戦になるように思われたが、園田/嘉村はさらにギアを上げて、危なげなく21-12で先取する。

第2ゲーム、インドペアはレシーブで大きくリターンし、甘くなったところを高さのあるジャンピングスマッシュで決めていく。対して園田/嘉村はネット前でのエラーが目立つも、園田が後衛、嘉村が前衛の得意の攻撃パターンで対抗し、10-11と接戦になる。なかなか主導権を掴めないが、観客の声援に後押しされるように園田/嘉村が低いドライブを中心に組み立ててからの連打で自分達のリズムを掴み、21-17で勝利を収めた。

園田/嘉村は「初戦で身体が重かったが、観客の声援に助けられた。この会場は東京オリンピックの会場と同じになるので力んでしまう時もあるが、しっかり勝ち抜いていきたい」と試合を振り返った。




遠藤/渡辺、持ち前の粘り強さを見せるも一歩及ばず。悔いの残る試合

モハマド・アッサン/ヘンドラ・セティアワン(インドネシア) 21-17 / 20-22 / 21-17 遠藤 大由/渡辺 勇大(日本ユニシス)

世界ランキング14位、ベテランの遠藤大由、日本人男子最年少の渡辺勇大ペアは初戦、今年7月のシンガポールオープン覇者、世界ランキング17位のモハマド・アッサン、ヘンドラ・セティアワンペアと激突した。

第1ゲーム、遠藤/渡辺はインドネシアペアの切れ味のあるスマッシュ、前衛のプッシュを我慢強くレシーブで崩してから攻めの形を作って点数を重ねていく。しかし、サービス周りでの簡単なミスが多く、お互いに主導権を握ることができない。17-18と大事な場面で遠藤がサービスミスで得点を献上するとそのまま17-21で奪われてしまう。

第2ゲームは、インドネシアペアの得意とするドライブからのアタックで攻め立てるが、レシーブで丁寧に四隅に打ち分けて大きなリードではないものの先制していく。19-18から2連続失点でインドネシアペアにマッチポイントを握られるも、気迫で3連続ポイントを奪い、22-20として、勝負はファイナルゲームに持ち越される。

ファイナルゲーム、遠藤/渡辺は守りから一転、攻めの形を展開する。5連続ポイントで7-4とする。しかし、インターバル直後、渡辺サービスミスで失点するとインドネシアペアは勢いづき、スピードを上げて攻めに転じる。15-13でインドネシアの猛攻を凌げず、5連続ポイントを奪われ、結局は17-21と悔しい敗退となった。

試合後、遠藤は「悔いが残る試合だった。サーブ周りとレシーブのさらなる強化が課題。」と話せば、渡辺は「ラリーのなかでいろいろなことができ、我慢強さも出せた。上位に食い込むために勝ちにこだわりたい。」とさらなる成長に向けて語った。




女子ダブルス

力出しきれず、初戦敗退

ガブリエラ・ストエヴァ/ステファニ・ストエヴァ(ブルガリア) 15-21 / 21-11 / 21-9 福万尚子/與猶 くるみ (ヨネックス)

世界ランキング15位の福万/與猶組は初戦、格上である同ランキング13位のブルガリアペアと対戦した。

第1ゲーム序盤は、女子ダブルスらしいクリアとドロップの打ち合いが続く長いラリーとなった。クリアを左右に打ち分けコートを大きく使って相手を動かし、ミスを誘う日本ペアだが、逆に自分たちがミスを連発してしまい8-11とインターバルを取られてしまう。しかしその後、與猶が相手の決定機のショットを拾うなどして流れを掴み、息のあったコンビネーションで次々と連続得点を重ねる。最終的に21-15で第1ゲームを先取する。

第2ゲームはブルガリアペアの攻撃が勢いを増す。福万と與猶の間を狙った強力なスマッシュが次々と放たれ、日本ペアがコートの四隅を狙った正確なレシーブで対抗するも力で押し切られてしまう。福万/與猶は反撃に出ることができず、このゲームを11-21で落とす。

ファイナルゲームもブルガリアペアは攻撃の手を緩めず、強力なスマッシュから前に詰めてプッシュという流れを崩さなかった。福万/與猶はインターバルを3-11で迎え、その後も攻撃の起点を見つけることができず9-21でファイナルゲームを奪われる。

試合後、福万は「出だしが良くなかった。パワーにパワーで対抗しようとし過ぎた。練習でできたことが出せなくて悔しい。」と涙をにじませた。




打倒上位選手へ、櫻本/髙畑が高い集中力で負けられない戦いを制す

櫻本 絢子/髙畑 祐紀子(ヨネックス) 21-13 / 15-21 / 21-11 デラ・デスティアラ・ハリス/リッキ・アメリア・プラディプタ(インドネシア)

今年ここまで出場した国際大会8大会で5度の優勝、2度の準優勝と世界ランキングを10位にまで上昇させ、ナショナルチームA代表をも脅かす躍進を見せている櫻本 絢子/髙畑 祐紀子(ヨネックス)が本日最後の試合に登場し、ランキング11位のインドネシアペア、デラ・デスティアラ・ハリス/リッキ・アメリア・プラディプタと対戦した。

第1ゲーム、プレーが光ったのは髙畑であった。相手の強打を徹底的に前で捌き、鋭いドライブリターンを切り込んで、序盤の6連続得点を演出、7-2とリードを奪う。自然と出来上がるトップ&バックの攻めの形、櫻本も後衛で鋭いスマッシュと短く沈むドロップを巧みに交えてエースショットを連発し、堅調な試合運びを見せた櫻本/髙畑が21-13として幸先よくゲームを取得した。

第2ゲームに入っても2人の得意のショットが次々に決まり、8連得点を奪い12-2、このまま櫻本/髙畑が突き進むと思われた。しかし、ここから調子を上げたのがインドネシアペア。アメリアが懇親のスマッシュをコートに突き刺したところから圧倒的な攻撃力を発揮し反撃に転じる。デスティアラがコート内を素早く動き回り飛びつき、高い位置でシャトルにコンタクトして好機を誘っては、アメリアが強力なスマッシュを次々に決めていく。13-13で追いついたかと思えば、早々に振りきってリードを奪い攻め立てる。強打の前に櫻本/髙畑ともにリターンやネットショットにミスが増え、そこに付け入るように球を沈め続けたデスティアラ/アメリアが21-15として大逆転劇でゲームを取り返した。

迎えたファイナルゲーム、序盤の競り合いから抜け出したのは櫻本/髙畑。髙畑がスマッシュ連打の中で、アメリアのフォアサイドへコースの有効性を見出すと、櫻本/髙畑が再び攻撃の勢いを取り戻して9-4とリードを奪う。強打を軸に前へ出てくるインドネシアペアに対し、櫻本のフォアハンドリターンが次々にカウンターショットとなって決まり8連続ポイントを奪うなど、追尾を許さない。結局、最後まで1本1本の集中力で上回った櫻本/髙畑が21-11手綱を緩めずにゲームを奪い、2-1として2回戦進出を決めた。

明日の2回戦では世界ランキング4位のグレシア・ポリー/アプリヤニ・ラハユ(インドネシア)と対戦する。櫻本が「初めての対戦でとても戦ってみたい相手でもあったので、自分たちのプレーがどこまで通用するか試したい。」と言えば、髙畑も「世界で活躍している選手なので楽しみ。明日は隙を見せない試合運びをしたい。」と話しており、どん欲なプレーに期待が持てそうだ。




強打に押され、自分たちらしさを出せず…

タン・ジンファ/ユ・シャオハン(中国) 21-17 / 21-10 米元 小春/田中 志穂(北都銀行)

世界ランキング5位の米元/田中は、世界ランキング29位のタン・ジンファ/ユ・シャオハンと対戦した。世界ランキング上位の米元/田中と、急上昇中のタン・ジンファ/ユ・シャオハンの初対戦に注目が集まった。

第1ゲーム序盤、両者とも譲らない展開となる。タン・ジンファ/ユ・シャオハンの強烈なショットの連打で、米元/田中は8連続ポイントを許してしまい5-12と苦しい展開になる。米元/田中はスマッシュ、ドロップの緩急をつけたショットを織り交ぜながら必死に食らいつき、15-18まで巻き返すも、タン・ジンファ/ユ・シャオハンの攻撃に押され17-21でゲームを奪われてしまう。

第2ゲーム、5-5からは徐々に点差を離される展開となる。米元/田中は角度のあるスマッシュに体勢を崩されることが多く、なかなか自分のラリーに持ち込むことができない。10-16からは5連続ポイントを奪われ、そのまま10-21でタン・ジンファ/ユ・シャオハンが勝利した。

試合後、田中は「自分たちはパワーがないので配球で戦うが、風を読めず、しっかり返球ができなかった。相手の強みであるクロスの強打をかわせなかった」と課題を口にし、米元も同様に、「強打の攻撃に押され、自分たちのやりたい事ができなかった」と悔しさを口にした。




我慢の連続攻撃、若きペアが勝利を掴み次の挑戦へ

志田 千陽/松山 奈未(再春館製薬所) 21-17 / 14-21 / 21-14 シュー・ヤーチン/ウー・ティジュン(チャイニーズ・タイペイ)

20歳と21歳、今のナショナルチームの女子ダブルスでは最年少のペアであり、出場する国際大会で好成績を重ねて世界ランキングを28位まで上げてきた志田/松山組が、同24位のシュー/ウー組と対戦した。

第1ゲーム、持ち前のテンポの良いアタックで主導権を握った志田/松山は、連続攻撃の手を緩めず、序盤の5連続得点で奪ったリードを活かして21-17でゲームを奪取する。

第2ゲームに入ると、それまで守備的なプレーが目立ったシュー/ウーがタッチを早めて攻撃に転じる。相手のスマッシュを前後左右巧みに打ち分けてリターン崩し、ウーが素早いフロントコートへの詰めを見せ、速い球をも上から叩いて得点を重ねていく。呼応するようにシューのスマッシュも決定力を上げ、シュー/ウーが危なげない試合運びで21-14として1ゲームオールに押し戻した。

勝負のファイナルゲーム、気迫とともに打ち勝つプレーを見せたのは志田/松山。松山がリアコートに下げられる展開が多くなるものの、辛抱強く打ち込んではローテーションを回し、志田の強打を起点とした得意の形をつくり、決定打につなげていき11-5とリードを奪って折り返す。シュー/ウーもロングサービスを多用するなどして再度相手を崩しにかかったが、終盤の決定機では足が止まってミスが続くなど、流れを引き寄せられない。一貫して攻撃的なラリーを展開した志田/松山の粘り勝ちと言うべきか、最後は「しっかり我慢してプレーができた」という松山がドロップをフロントコートに沈めて勝負あり、21-14で制した。