大会展望2
大会ドロー発表!いよいよ世界頂上決戦始まる!

【男子シングルス展望】
トップスターが勢ぞろい。
世界王者・桃田賢斗は初優勝なるか

8月22日にドローが公開され、ダイハツ・ヨネックスジャパンオープンの出場予定選手が固まった。ここで試合の見所を紹介する。

世界ランクトップ20のうち19選手が参戦!

西本拳太(日本)

2020年の東京オリンピック会場で行われる今年の『ダイハツ・ヨネックスジャパンオープン』には、これまで6度この大会を制しているリー・チョンウェイ(マレーシア・WR3位)が体調不良で出場を辞退した以外は、世界ランクトップ20のうち19名が揃う豪華な顔ぶれになった。

常山幹太(日本)

リオ五輪金メダリストのチェン・ロン(中国・WR7位))や銅メダリストのビクター・アクセルセン(デンマーク・WR1位)をはじめ、男子シングルスで唯一五輪連覇を果たしたレジェンド、リン・ダン(中国・WR14位)といったスターたちがやってくる。

日本からは、もちろん世界選手権を制した桃田賢斗(WR4位)が出場。このほか、西本拳太(WR10位)、常山幹太(WR19位)、坂井一将(WR26位)の3人が参戦し上位を目指す。





頂点まで険しい道のりが待つ桃田賢斗

桃田賢斗(日本)

なかでも日本のファンの注目は、"桃田が初優勝なるか"だろう。「子どもの頃からこの大会を見てきて、ここで勝つことが夢だった」という桃田にとって、『ダイハツ・ヨネックスジャパンオープン』は特別な大会だ。

だが、初優勝までの道はそう簡単ではない。緊張のかかりやすい初戦で当たるのは、世界選手権でファイナルまで苦しめられたアンダース・アントンセン(デンマーク・WR16位)。ここを切り抜けたとしても、準々決勝で手強い相手が待っている。

最初のシード選手との対戦は、世界ランキング通りにいけば準々決勝であたる、攻撃型のチョウ・ティエンチェン(チャイニーズ・タイペイ・WR6位)だが、2回戦でリン・ダンがチョウに勝つ可能性がある。これまで桃田はバドミントン界のレジェンドに一度も勝ったことがなく、もし桃田がリン・ダンを倒せば、時代の入れ替わりを象徴する歴史的一戦になるだろう。




実質的な決勝戦になるか。準決勝は桃田賢斗VSビクター戦

ビクター・アクセルセン(デンマーク)

桃田が準決勝まで進めば、勝ち上がってくるのはアクセルセンになりそうだ。アクセルセンは、桃田と同じ1994年生まれ。桃田が世界の第一線から離れている間、194㎝からの鋭角スマッシュを武器にリオ五輪の銅メダル、昨年の世界選手権で金メダルを獲得し、1年前、世界ランキング1位についた。

このアクセルセンと、現世界チャンピオンの桃田が顔を合わせれば、"剛"VS"柔"のバドミントン界でもっとも素晴らしいカードになる。桃田は世界選手権優勝後、「アクセルセンと対戦していない優勝は実感が乏しい」と話しており、ジュニア時代からのライバルに勝ちたい気持ちは強いはずだ。





反対側の山では、中国、インド、韓国が激戦

シー・ユーチー(中国)

一方、反対側の山でも激戦が予想される。注目の一戦は準々決勝の中国対決。世界選手権2位のシー・ユーチー(WR2位)と、リオ五輪金メダリストのチェン・ロンの対戦は、互いに手の内を知る者同士だけに、激しい打ち合いになりそうだ。

チェン・ロン(中国)

もし世界選手権に続いて22歳のシー・ユーチーが勝てば、顔を合わせるのはインドのスリカンス・K か、韓国のソン・ワンホか。スリカンスとソンはどちらもラリー型で実力は拮抗している。2人が繰り広げる頭脳戦は、バドミントンの愛好者にとって見応えの駆け引きが感じられるはずだ。

決勝戦は、桃田がこの3人のうちの誰かと当たればおもしろい。「これからも挑戦者の気持ちを忘れず戦いたい」という世界王者・桃田が、向かってくる力をどうかわすかが見物だ。

また日本のファンが、桃田のプレーを実際に見られる機会は、『ダイハツ・ヨネックスジャパンオープン』と冬の全日本総合選手権の2大会に限られている。そういった意味でも今大会には稀少性がある。











【女子シングルス展望】
五輪・世界選手権のメダリストが全員集結
山口茜&奥原希望が2度目のVに挑む

五輪・世界選手権のメダリストが頂点を目指す

山口茜(日本)

女子シングルスもトップ16を一人も欠かない当代きってのトップ選手が集まる豪華な顔ぶれになった。昨年に引き続き、リオ五輪と8月上旬の世界選手権のメダリストが全員参戦するのだから、バドミントンファンにとって、これ以上嬉しいことはない。

奥原希望(日本)

さらに今年は、昨年欠場した世界ランク1位のタイ・ツーイン(チャイニーズ・タイペイ)が加わり、戦いがいっそうハイレベルになった。

日本からは、JAPANの2枚看板山口茜(WR2位)と奥原希望(WR8位)が出場するほか髙橋沙也加(WR13位)、佐藤冴香(WR16位)、大堀彩(17位)、三谷美菜津(WR25位)、川上紗恵奈(WR38位)の5名も登場する。

山口、奥原はどちらも2度目の優勝が目標。髙橋以下は、東京五輪出場の夢に近づくため、ここで最低でも準々決勝以上に進みたいところだ。


タイ・ツーインが台風の目に

タイ・ツーイン(チャイニーズ・タイペイ)

優勝争いは、第1シードのタイ・ツーインを軸に展開されそうだ。対応力のある24歳は世界選手権こそ準々決勝どまりだったが、今年はSuper500以上のワールドツアーで最多の4勝を挙げている。
日本の朴柱奉ヘッドコーチが「誰よりも頭ひとつ抜けている」と評するほどで、間違いなく今大会の優勝候補筆頭だ。もし、今年優勝すれば2012年以来、6年ぶり2度目となる。

タイ・ツーインがいる山には奥原がおり、順当にいけば準々決勝で対決する。2人の対戦成績は3勝3敗で、どちらが勝ってもおかしくない名勝負になりそうだ。





激戦区はシンドゥのいる山

キャロリーナ・マリン(スペイン)

タイ・ツーインか奥原のどちらかが、準決勝で対戦する選手を当てるのは難しい。最激戦区の上から4分の2番目の山には、実力者が勢ぞろいしている。たとえば1回戦には2つの"もったいない"カードがある。

一つ目はリオ五輪&世界選手権の銀メダリスト、プサルラ・V・シンドゥ(インド・WR3位)と日本の髙橋沙也加の対戦だ。攻撃型同士の打ち合いは激しくなりそうで、挑戦を受けるシンドゥはしんどいはずだ。 プサルラ・V・シンドゥ(インド)

また2016年優勝のヘ・ビンジャオ(中国・WR7位)と、ロンドン五輪の銅メダリスト、サイナ・ネワール(インド・WR10位)の技巧派対決も、1回戦で当たるには惜しい顔合わせだ。テクニックを駆使した化かし合いに勝つのはどちらになるか。この2つの対戦の勝者が、準決勝でタイ・ツーインもしくは奥原と試合をしそうだ。







山口茜は2013年以来2度目の優勝がかかる

第2シードで2度目のVを目指す山口茜(WR2位)は、準々決勝であたるであろう、2017年世界選手権の銅メダリスト、チェン・ユーフェイ(中国・WR5位)との対戦が大きな山場だ。テンポのいいラリーを構築する20歳の動きを、ラケットワークのいい山口がどう止めるか。

さらに「強さを極めたい」という山口がここを抜けられたら、次はリオ五輪の金メダリストで、今年、世界選手権で3度目Vを飾ったキャロリーナ・マリン(スペイン・WR6位)と当たりそうだ。準々決勝でタイのラチャノック・インタノン(WR4位)がマリンを退けられる力があるが、勢いでいえばマリンにやや分がある。
準決勝が山口VSマリン戦になれば、鋭い読みを持つ同士のおもしろい頭脳戦になるだろう。

このほか、女子シングルスは優雅なラリー型のスン・ジヒュン(韓国・WR9位)も伏兵として上位にきそうだ。スターたちが勢ぞろいするだけに序盤から目を離してはいけない。




【女子ダブルス展望】
JAPAN決戦に大きな期待
日本A代表は誰が勝ってもおかしくない

女子ダブルスは
日本決戦が現実味を帯びる

髙橋礼華/松友美佐紀(日本)

女子ダブルスは「ダイハツ・ヨネックスジャパンオープン」のなかでもっとも日本が優勝に近い種目だ。昨年はリオ五輪の金メダリスト髙橋礼華/松友美佐紀(WR2位)が韓国ペアを下し、2度目の優勝を飾った。

これまで髙橋/松友と数々のドラマを演じてきたデンマークのリター・ユール/ペダセンがリター・ユールの懐妊でペアを解消し、今、女子ダブルスのトップ争いは日本の独壇場になりつつある。

福島由紀/廣田彩花(日本)

さらに今年は髙橋/松友も優勝候補だが、8月上旬の世界選手権で日本は3色のメダルを獲得しており、オリンピックに出場したことのないこの3ペアに勢いがある。

世界選手権のメダリストのうち、第1シードについたのは福島由紀/廣田彩花。今年7月、初めて世界ランキング1位となり、どの大会でもコンスタントに上位に上がる力がある。

今回、ドローに恵まれ、髙橋/松友や、日本の世界選手権メダル組と決勝前に当たらない。シードからいえば準決勝で当たるのは、ノーロブスタイルで攻撃をしかけるインドネシアのポリー/ラハユ(WR4位)か。世界選手権の銅メダリストとは対戦成績は2勝2敗で、ここが緊張の一戦になるだろう。

ただしポリー/ラハユを倒し、ねばり強いイ・ソヒ/シン・ソンチャン(韓国・WR8位)が上がってくる可能性もある。
いずれにしても、今年の福島/廣田は決勝へ勝ち進むチャンスに恵まれ、初タイトルにかける思いは強いはずだ。

タカマツの山は誰しも容易に勝てない激戦区に

松本麻佑/永原和可那(日本)

第2シードの髙橋/松友のいる山は、世界選手権の金メダリスト松本麻佑/永原和可那、同大会銅メダルの米元小春/田中志穂、さらに17年世界選手権優勝のチェン・チンチェン/ジァ・イーファン(中国・WR3位)が固まる激戦区になった。

ポリー/ラハユ(インドネシア)

タカマツが嫌なのは、おそらく準々決勝で松本/永原と当たることだろう。世界選手権では3回戦でわずか13本、15本で敗れた。技術や経験は十分なだけに、課題はいかに勝利に向かって心を奮い立たせられるかにある。松本/永原は世界女王となった勢いそのままに、両ペアで名勝負を演じてほしいところだ。

順当にいけば米元/田中は、準々決勝でチェン/ジァと対戦する。4勝2敗で分はいいが、米元が「はまったら止められない強さがある」と警戒するだけに怖い存在だ。

準決勝は、おそらく髙橋/松友VS松本/永原、米元/田中VSチェン/ジァの勝者の対戦になる。もしここで日本選手が勝ち抜き、福島/廣田との日本決戦になったら2014年以来、2度目の快挙となる。



【男子ダブルス展望】
もっともスリリングで興奮できる男子ダブルス
ソノカム、インドネシア、中国が優勝候補

ソノカムが初優勝に向かって一直線
世界王者&世界ランク1位を突破せよ

園田啓悟/嘉村健士(日本)

「もっとも強いダブルスペアは誰?」と聞けば、1カ月前なら間違いなく、多くの選手が「インドネシアのギデオン/スカムルヨだよ。あそこには勝てない」と答えただろう。
ギデオン/スカムルヨは今大会を含め、この1年で最多の8勝を挙げ、もちろん世界ランクは1位。その破竹の勢いは誰にも止められないように見えた。

しかし、8月の世界選手権で2人を止めたペアがいる。日本のエース園田啓悟/嘉村健士(WR3位)だ。今年、ギデオン/スカムルヨはもっとも欲しかった世界選手権のタイトルに照準を合わせてきたはずだが、準々決勝で園田/嘉村がインドネシア特有のトリッキーな球に次々と対応。得意のノーロブに徹して19本、18本で勝利をおさめた。

しかし、金星をつかんだソノカムだが、準決勝でチャイニーズ・タイペイのチェン・フンリン/ワン・チーリンに勝ったあと、決勝で195㎝&193㎝のリー・ジュンホゥイ/リゥ・ユチェン(中国・WR4位)の鋭角スマッシュに屈し、初優勝はならなかった。

これが世界選手権のストーリーだが、このなかには読み取るべき3つのポイントがある。
「誰も勝てない」と言われていたギデオン/スカムルヨの絶対神話が崩れたこと。そして、神話を崩したのが園田/嘉村であること。さらに23歳と若いリー/リゥがはっきりと頭角を現したことだ。
つまり世界はギデオン/スカムルヨ王朝ではなく、三つ巴の様相を呈してきたのだ。



ソノカムは準決勝で世界選手権・決勝を再現するか

したがって「ダイハツ・ヨネックスジャパンオープン」は、この3ペアを軸に展開されていくことになるだろう。順当にいけば、園田/嘉村は準決勝でリー/リゥと当たる。2人はここで世界選手権のリベンジを果たし、決勝でギデオン/スカムルヨと再戦したいところ。もし、インドネシアペアとの決戦になれば、世界最高峰のスピード戦になる。

ただし、それらの前に世界選手権の準決勝で当たったチェン/ワンか、技巧派・アストルプ/ラスムセン(デンマーク・WR8位)という手強い相手も待っている。決して気を抜くことはできないだろう。

ギデオン/スカムルヨの速攻戦に見応えあり

ギデオン/スカムルヨ(インドネシア)

一方、第1シードで2連覇のかかるギデオン/スカムルヨは、準々決勝でデンマークのボー/モゲンセン(デンマーク・WR5位)と当たる確率が高い。ボー/モゲンセンは38歳&35歳の最年長ペアだが、経験に裏打ちされた技術と鋭い読みで、いまなおトップクラスに健在している。 対戦成績は互いに4勝4敗で、デンマークがインドネシアの速攻をどう封じていくかが見物になる。おもしろい試合になるだろう。

上から4分の2番目の山は、世界ランクでいえば中国のリュウ/ツァン(WR4位)が有力な上位進出候補だ。リオ五輪の金メダリスト・ツァンが巧みに若いリュウの攻撃を演出し、初優勝を狙っている。
しかし、これに待ったをかけるのが日本勢だ。1回戦でソノカムと同じノーロブを持ち味にしている保木卓郎/小林優吾(WR19位)が挑戦する。「いま、少し結果が出てない状態が続いていますが、突破口を探したい」とは保木の言葉だ。

仮にここでリュウ/チャンが勝ったとしても、準々決勝で昨年2位の井上拓斗/金子祐樹(WR7位)が上位進出を阻みにかかる。園田/嘉村、保木/小林と違い、打たせて勝つ展開を得意にする井上/金子だけに、どこまで中国の猛攻をしのげるかに注目だ。

男子ダブルスは、展開が速いだけに1回戦から思わぬ番狂わせも多い。世界トップクラスのスピードとパワーを堪能し、序盤からしっかり勝敗の行方を見届けてほしい。

【混合ダブルス展望】
優勝候補は中国のトップ2
リオ金メダリストが独走を阻む

2度目の優勝がかかる中国勢
決勝独占の世界選手権の再現を狙う

世界選手権では中国が同国決戦を演じた。このとき勝ったのがジェン/ファンで世界ランキングは1位。そして銀メダルのワン/ファンは目下世界ランク2位だ。混合ダブルスはいま、この中国ペアが世界を席巻している。

「ダイハツ・ヨネックスジャパンオープン」でも、この2ペアが第1シードと第2シードで優勝筆頭候補だ。ジェン/ファンのうち、ジェンが2年ぶり2度目、ワン/ファンは大会2連覇がかかっている。

…と、ここまで書くと、今大会は「中国の独壇場になるのか」と思われるだろうが、そうではない。今年は世界選手権よりおもしろくなりそうな存在が加わった。

台風の目になるのは、リオ五輪の金メダリストで3年ぶりに来日するインドネシアのアフマド/ナッチル(WR3位)だ。昨年の世界選手権のチャンピオンだが、引退が近いとされる2人は、まだ手にしたことのないアジア大会の金メダルを開催国であるインドネシアにもたらすため、世界選手権の出場を控えたと現地で報道されている。

誰よりも経験豊富な31歳&33歳が、若い中国ペアと対戦したらどう配球して攻撃を封じるのか、見る楽しみが多い。順当にいけば、まず準決勝でジェン/ファンと顔を合わせる。ただジェン/ファンの前には、息の合ったコンビネーションを見せるアドコック夫妻(イングランド・WR7位)との対戦もありそうで、難しい一戦になりそうだ。

全英チャンピオン・渡辺&東野は険しい道のり

日本のファンが気になるのは、今年3月、全英選手権で日本人初優勝を遂げた日本の渡辺勇大/東野有紗(WR14位)が勝てるかだろう。

全英選手権では、シード4ペアを下して頂点に立ったが、その後、ワールドツアーでの優勝とは縁がない。世界選手権も16強に留まった。

今大会では、2回戦から第4シードのタン/ツェ(ホンコン・チャイナ)と当たる厳しい山組で頂点までの道のりは険しい。だが、全英選手権での勝ち方を再現すれば、初優勝は夢ではない。熱い声援をバックに勝ち進んでほしいところだ。

このほか上位には、上位常連のゴー/ライ(マレーシア・6位)やロンドン五輪の金メダリストのツァンと21歳のリーという中国ペア(WR12位)が侮れない存在として上へあがってくるかもしれない。

好カードが配置される「アフター5」チケット
平日17時から試合を見に行こう

なお、今年も11日(火)から14日(金)までの4日間、17時から安価に入場できる「アフター5」チケットを販売する。11日(火)から13日(木)までは12試合以上、14日(金)は8試合以上の観戦が可能だ。

好カードが必ず配置されるので、「平日はなかなか試合を見られない」という人でも通学や通勤帰りに世界のプレーを観戦できる。初戦から熱戦が期待できる『ダイハツ・ヨネックスジャパンオープン』をお得なチケットを使って観に行こう。

*世界ランキング(WR)は8月16日付