観戦記事
9月14日(金)準々決勝

男子シングルス

第1シード、次々にシードが姿を消す中、順当に勝ち上がる

ビクター・アクセルセン(デンマーク) 21-17 / 21-15 アンソニー・シニスカ・ギンティング(インドネシア)

大会連覇を狙うビクター・アクセルセンが、アジア大会で桃田賢斗(NTT東日本)を破ったアンソニー・シニスカ・ギンティングと準決勝進出をかけて激突する。二回戦同様スロースタートのビクター・アクセルセン、対するアンソニー・シニスカ・ギンティングは前半から果敢に攻めスタートダッシュを見せる。点差をつけられないようついていくビクター・アクセルセンは、徐々にスピードを上げ、194cmの長身からのキレのあるスマッシュがギンティングのコートに突き刺すなどして主導権を奪い返す。アンソニー・シニスカ・ギンティングもスピードを上げ、早いタッチで崩し絶妙なドロップでノータッチを奪うも、ビクター・アクセルセンが「今日は相手の守備より自分の守備が上回っていた。」と振り返ったように猛攻を凌ぎフォアからのクロスカットスマッシュで21-17と奪う。

第2ゲーム、序盤からビクター・アクセルセンの鋭いスマッシュがサイドライン際に決めれば、アンソニー・シニスカ・ギンティングも強烈なスマッシュと緩急のあるドロップで決めてお互いに一歩も譲らない。試合が動いたのは12-12、アンソニー・シニスカ・ギンティングのサイドアウトをきっかけに3連続ポイントでビクター・アクセルセンが流れを引き寄せる。何とか流れを変えたいアンソニー・シニスカ・ギンティングは17-15の場面で間を取るが、審判から警告を受け逆効果になる。ビクター・アクセルセンが攻めたて、4連続ポイントで21-15として順調に準決勝への駒を進めた。

ビクター・アクセルセンは試合後、「今日の相手は我慢されるのを嫌がったのでそういうプレーをしたが、相手の特徴によって自分のプレーを変えていくつもりだ。」とさらなる進化を感じさせるコメントを話した。




憧れの選手と対決、ファンの声援と共に快勝!

桃田賢斗(NTT東日本) 21-8 / 21-10 リン・ダン(中国)

昨年、再スタートを切ったとき、世界ランク282位だった桃田。瞬く間に駆け上がり、現在世界ランク4位の桃田と、2004年から10年間バドミントン界の王者として君臨していたリン・ダンの試合が幕を開ける。

試合は意外にもゆっくりとしたテンポで始まる。お互いに相手の様子をよく伺いながら次の一手を打ち込んでいるかのように慎重なラリーが続く。様子を伺いつつも一瞬の隙をついて、リン・ダンの守備範囲外へシャトルを運ぶ桃田は、あっという間に11-3とする。桃田の勢いは続き、17-4と追い込まれるリン・ダン。焦ることなく淡々と前後左右にシャトルを散らすリン・ダンにスピードで上回った、桃田が21-8で第1ゲームを奪う。

第2ゲームも一貫して桃田の独壇場になる。レジェンド リン・ダンのお株を奪うかのような、体力の消耗を感じさせないフットワークと、鍛え上げられたフィジカルが織りなす力強いスマッシュで9-3と桃田が点数を重ねていく。一方のリン・ダンはこれまでのキャリアに裏付けられたトリックショットで会場中を沸かせるも、ここまでファイナルゲーム2試合の疲労でスピードが出ない。結局は桃田が21-10でストレート勝ちを決める。

試合後、桃田は「リン・ダン選手はディフェンスが上手なので、攻めすぎずに試合を運ぶことを意識した。1球1球の予測が難しく、相手に球を読ませないストロークをする戦い方は非常に勉強になった。2ゲーム目、長いラリーの後は気持ちが切れてしまうことが多いが、ファンの声援に助けられた。」と語った。




女子シングルス

絶妙なギアチェンジ、強いバドミントンで4強入り決める

奥原 希望(日本ユニシス) 21-17 / 21-16 チェン・シャオシン(中国)

今シーズン、上位入賞が優勝したタイオープンのみと本調子でなかった奥原希望。日頃から周りの方々への感謝、恩返しを大きく掲げる奥原にとっては、日本で行われるこの大会は誰よりも強い思いで臨んでいると言っても過言ではない。相手は、昨日世界ランキング1位のタイ・ツイーンから金星をあげて勝ち上がってきた、中国の20歳チャン・シャオシン。既に4強入りを決めていた同じく20歳の中国1番手・チェン・ユーフェイに追いつくためにも、チャンにとっても大事な一戦となった。

第1ゲーム、奥原は開始早々にコーナーを正確に捉えたショットで相手を惑わす。ラリーの組み立ては対照的で、チャンは170cmの上背を活かして積極的にスライス、スマッシュを打ち込むことを主軸とし、奥原は正確なクリアとブレーキの効いたドロップショットで相手を走らせる。奥原は「鋭いショットがコートギリギリに入ってきたが、自分の粘りで対応した。」と語っている。互いに譲らない展開でゲームは進んでいくが、高度なラリーの連続でチャンが先に音を上げた。14-14の場面でラウンドからのスマッシュをネットにかけると、勝負所と見た奥原がスピードを上げ、次の激しいラリーも奪取。チャンはショットに精彩を欠き、相手コートに返しきれない場面が続く。最後もチャンのバックハンドドロップがサイドラインを割り、奥原が21-17でゲームを先取した。

第2ゲームは序盤、チャンが強さを見せる。ミドルコートでは積極的に球に飛びついて沈め、フロントコートへの入りを早くしてネットプレーで好打を連発、11-8とリードを奪う。その後激しくコートを動き回るラリーで一進一退の攻防が繰り広げられるが、やはり終盤で勝負師としての集中力に長けたのは奥原だった。相手の強力なスマッシュを何本も凌いで1本クロスカットを決めると、相手のお株を奪うかのごとく、ネット前で競り勝っては飛び込んでプッシュを決め6連続得点、18-15と一気に形勢を逆転する。最後までショットの正確さを失わなかった奥原が21-16としてストレート勝ちで準決勝進出を決めた。

この試合の奥原の勝利により、明日の準決勝で奥原-大堀の日本人対決が実現。奥原は「(相手となる大堀選手は)サウスポーで独特のリズム、ショットを持った選手だが、お互い相手を知っているので、自分なりのコンディションの中で駆け引きしていきたい。」と話し、後輩との対戦を堂々と受け止める姿勢だ。




憧れの舞台で力を出し切り初の4強入りを果たす

大堀彩(トナミ運輸) 21-14 / 21-12 ガオ・ファンジェ(中国)

世界ランキング17位の大堀と世界ランキング14位のガオ・ファンジェが対戦した。2度目の対戦で昨年4月のチャイナマスターズで大堀が勝っている。大堀はここまでの2試合を2ゲームでしっかり勝ち切っており、中国の強敵ではあるが、2年ぶりのベスト4入りが期待された。

第1ゲーム、「(離されたらついていけないと思ったので、)前半から飛ばしていった。」という大堀に対して、ガオ・ファンジェは堅さが見られる。大堀は長い手足を活かした切れ味のあるショットと速いタッチで9-0の大量リードを奪う。ガオ・ファンジェは四隅をつく丁寧なラリーで対抗するものの、序盤のリードに甘んじることなくさらにスピードを上げた大堀が得点を重ね21-14で奪う。

第2ゲーム、お互いに点数を取り合い10-9と拮抗するも、ラリーで粘り強くミスをしない大堀に対してガオ・ファンジェは我慢しきれずミスを連発してしまう。大堀は8連続ポイントを奪うなどして21-12で初の準決勝進出を果たした。

大堀は、「この大会は小学生の時から見ていて、憧れの舞台。明日の準決勝も簡単に勝てる相手ではない。長いラリーになるのは当たり前と思って最後まで動き続けて戦いたい。」と意気込みを語った。




連覇を狙う女王キャロリーナ・マリン、タフなゲームを勝ち切る

キャロリーナ・マリン(スペイン) 21-18 / 21-19 ラチャノック・インタノン(タイ)

世界ランキング6位で昨年の覇者キャロリーナ・マリンと世界ランキング4位のラチャノック・インタノンが対戦した。

第1ゲーム序盤からお互いにフットワークが軽快で、スマッシュを打ち合う速い展開となる。交互に点数を取り合い5-5からラチャノック・インタノンのバックアウトやサイドアウトが目立ち始める。キャロリーナ・マリンが最後まで攻め続け21-18で第1セットを先取する。

第2ゲーム、交互に点を取り合うが、際どいライン際を攻め続けるキャロリーナ・マリン、それに対しラチャノック・インタノンはあと1歩のところでシャトルに手が届かない。19-17とラチャノック・インタノンはキャロリーナ・マリンを何度かスライディングさせるようなショットで必死の追い上げを見せるも結局は、21-19で勝利の女神はマリンへ微笑んだ。




日本vs中国 若きエース対決

チェン・ユーファン(中国) 21-12 / 15-21 / 21-15 山口茜(再春館製薬)

今大会第2シードで優勝を期待されている山口茜が世界ランキング5位のチェン・ユーファンと熱い試合を繰り広げた。

山口は立ち上がりからドリブンクリアや低いロブで相手を動かし得点を奪っていく。一方のチェン・ユーファンはすかさずスピードを上げ攻撃的なショットで反撃する。9-9と得点を取り合うも、チェン・ユーファンが15㎝の身長差(山口156㎝、チェン・ユーファン171㎝)を活かし角度ある強打、ドリブンクリアを有効打に抜け出す。「第1ゲームは体が重く、スピードがあげられなかった。」と振り返った山口は反撃の糸口を見つけられず12-21であっさりと1ゲーム目を落とす。

第2ゲーム、お互いに点を取り合う展開になる。9-11と山口がリードされている場面で持ち前の粘り強さを発揮、チェン・ユーファンに喰らいつき12-13とする。次のラリーでチェン・ユーファンがチャレンジを失敗すると、流れは山口に。「会場の声援が力となり取り返すことができた。」という山口が連続ポイントを重ね21-15で奪い返す。

ファイナルゲームは、チェン・ユーファンの強打に対して粘りながら相手のミスで1点返し、そこから一気に6連続ポイントで7-4とリードする。しかし、「スピードを上げられず前半のリードのままいけなかった。」と山口が振り返ったようにチェン・ユーファンのスピードに付いていけず、逆転されてしまう。終盤、山口は得意のネットショットでチャンスを作り点数に結び付けるが、チェン・ユーファンの勢いの衰えない攻撃に対抗できず4強を前に敗退してしまう。




男子ダブルス

好調続くも勝ちきれず

へ・ジティン/タン・チャン(中国) 18-21 / 21-19 / 21-15 保木卓朗/小林優吾(トナミ運輸)

本大会好調の世界ランキング21位の保木/小林は世界ランキング19位のへ・ジティン/タン・チャンと対戦した。

第1ゲーム、小林はクロスレシーブで相手の連続攻撃を防ぎ、空いた空間を狙ったショットでチャンスを作れば、保木は前衛でしっかり前でシャトルを捉え、相手コートに沈める。緩急のある攻めで16-15から抜け出した保木/小林が第1ゲームを先取する。

第2ゲーム、保木/小林の攻めに中国ペアが対応し始める。攻めの起点となる小林のスマッシュをショートレシーブでオープンスペースにリターンされ攻守交替となり、流れを掴むことができない。19-19の接戦になるが、攻めのパターンをうまく作り勢いに乗った中国ペアに19-21で2ゲーム目を奪われてしまう。

ファイナルゲームでは2ゲーム目まで有効だった小林のクロスレシーブを中国ペアに上手く対応されてしまう。その結果ネット前を支配され、強烈なプッシュが叩き込まれる。終盤保木/小林はサービスレシーブでもミスを連発して相手に7連続ポイントを許し21-15で悔しい敗戦となった。

試合後、「2ゲーム目以降レシーブが甘くなってしまった」と保木が話せば、小林は「相手の方が我慢強かった。それが敗因。」と振り返った。




女子ダブルス

長いラリーで流れを引き寄せて、完勝

福島 由紀/廣田 彩花(岐阜トリッキーパンダース) 21-12 / 21-7 ジョンコルファン・キティタラクル/ラウィンダ・プラジョンジャイ(タイ)

世界ランキング1位の福島/廣田と世界ランキング8位のジョンコルファン・キティタラクル/ラウィンダ・プラジョンジャイが顔を合わせた。過去の対戦成績は7戦5勝の福島/廣田だが、7月のタイオープンではファイナルゲームで敗れているだけに気持ちの入る一戦となった。

第1ゲーム、序盤からお互いにラリー型のスタイルではあるが、エンジン全開で息をつかせない世界トップレベルの応酬が展開される。お互いに点を取り合い9-9となるが、長いラリーで福島/廣田は厳しいショットもしっかりとリターンして相手のミスを誘う。6連続ポイントで15-9と抜け出し流れを引き寄せ21-12で奪う。

第2ゲームの序盤は、福島/廣田にミスが出て5-7となるが、得意のラリーに持ち込んでリズムを取り戻す。ドライブやレシーブだけでなくクリア、ロブの精度も高くタイペアに決定打を許さない。一方のタイペアはミスを重ね反撃のきっかけをつかめず、福島/廣田が17連続ポイントを奪い21-7と終わってみればワンサイドゲームで準勝進出を果たした。

試合後、福島は「明日もしっかり長いラリーで我慢して戦いたい。」と語った。




流れつかめず…勢いあるプレーは封じられる。新たな課題も明確に

ドゥ・ユエ/リー・インフィ(中国) 21-16 / 21-10 松本麻佑/永原和可那 (北都銀行)

世界選手権で優勝し、今大会初優勝を目指す世界ランキング6位の松本/永原は世界ランキング12位のドゥ・ユエ/リー・インフィと対戦した。

第1ゲームは、中国ペアがジャンピングスマッシュやクロスカットなど攻撃的なショットを連発する。松本/永原は7-13と大きくリードされるも、相手の強力なショットに対してドライブでレシーブするが、スピードについていけず甘い球を多く上げてしまい16-21で第1ゲームを落としてしまう。

第2ゲームも中国ペアの多彩なショットに日本ペアは圧倒され、低いラリー戦に持ち込まれ7連続得点で3-10と一気に引き離されてしまう。チャンスの場面でも本来のレシーブ、アタックを発揮できなかった松本/永原は10-21で敗れてしまう。

試合後松本は「レシーブに回る展開が多かった」と話せば、永原は「迷いの多い試合だった。また上を目指して頑張りたい」と振り返った。




混合ダブルス

全英選手権覇者の若手ペアが実力を見せる!

渡辺勇大/東野有紗(日本ユニシス) 21-8 / 21-12 保木卓朗(トナミ運輸)/米元小春(北都銀行)

3月に開催された全英選手権でフィーバーし日本人初優勝を果たした渡辺/東野とペアを組み始めて間もない保木/米元が対戦した。

第1ゲーム、序盤から渡辺/東野が低い球でゲームメイクし主導権を握る。後半大きな展開でお互いに探り合い、長いラリーが続く。渡辺/東野は保木の強力なスマッシュも落ち着いて左右に大きく返し、余裕を見せる場面もあった。後半は3得点しか与えず、大差で第1ゲームを奪う。

第2ゲーム、出だしから東野がジャンピングスマッシュを連打するなどボルテージを上げる。対する保木/米元も強打で対抗するが、2-2から混合ダブルスとして経験の勝る渡辺/東野がノーロブを徹底し連続ポイントを奪い、一気に流れを引き寄せる。保木/米元はレシーブから積極的に仕掛け反撃を試みるも、動きと反応のよい東野に前で止められてしまう。その後も渡辺/東野が攻撃の手を休めることなく21-12で圧勝、準決勝に駒を進める。

試合後東野は、「前のポジションでレシーブができた。勇大くんが後ろで我慢してくれたのでしっかり決めきれた。」と話せば、渡辺は、「集中力が切れてやられる展開があったので、切らさずにいきたい。次の相手(ワン・イルユ/ファン・ドンピン(中国))は前回負けている相手なので、熱い声援で盛り上げてもらいたい。」と笑顔で話した。