観戦記

準決勝 7月27日(土)

男子シングルス
大会連覇へ、勝ち切る強さを見せた桃田が貫禄のストレート勝ちで決勝戦進出。

桃田 賢斗(NTT東日本) 21-18/21-12 B.サイ・プラニース(インド)

 昨年の9月末から世界ランキング1位を維持し、追われる身として初めてダイハツヨネックスジャパンオープンに臨んでいる桃田賢斗が、インドのB.サイ・プラニースの挑戦を受けた。プラニースは1、2回戦で西本拳太、常山幹太(ともにトナミ運輸)を破り、準々決勝では実力者のトニー・スギアルト(インドネシア)を僅か36分で撃破するなど、ラリー型の選手ながら要所で抜群の決定力を見せ、調子を上げて臨んでいる。

 第1ゲーム、コートを広く使ったラリーの中で、プラニースがサイドライン際のストレートスマッシュを中心に攻撃を組み立て、桃田は我慢強くリターンしていく展開でゲームが進んでいく。11-11の場面から桃田がスマッシュを決めて得点すると、テンポのいい球回しとチャンスで突き刺す強打でリードを保ち、そのまま21-18としてゲームを奪う。

 第2ゲームに入ると、プラニースはラリーの中で巧みなディセプション(騙しのショット)を用いて、相手の動きの逆を突きながら、ミスを誘っては確実に決め、9-6とリードを奪う。しかしここからのゲーム運びが桃田の真骨頂であった。「昨日の試合では2ゲーム目にスピードを上げすぎて空回りしたので、今日はおさえつつしっかりラリーをしようと思った。」と言う通り、相手の球に対応した適切なラリー対応をし、自分のペースでアタックを仕掛けて、強力なスマッシュを確実に決めて得点を重ねていく。5連続得点で逆転し、その後も怒涛の7連続得点を奪って21-12。桃田が貫禄のストレート勝ちで大会2連覇に王手をかけた。

 「あと1試合。今大会は連覇を狙いに来ているので、明日の決勝戦もしっかりと戦って、自分の力を出し切り、会場に来て応援のパワーをくれている皆さんへの恩返しをしたい。」と、桃田は決勝戦に向けた並々ならぬ思いを語った。また、「子供たちにも1球1球の執着心や、シンプルに強い気持ちを持って戦う姿をしっかりと見せる戦いにしたい。」と語っており、日本のエースとしての自覚は十分。明日の躍動が大いに期待される。


女子シングルス①
ベストでない中でも勝ちきる奥原選手のフィジカル、気持ちの強さが光る

奥原 希望(太陽ホールディングス) 21-12/21-18 ミシェル・リー(カナダ)

 世界ランキング3位の奥原が世界ランキング14位のミシェル・リーと対戦。これまでの対戦成績は5勝2敗、奥原にとっては直近4連勝と相性のよいカードだが、ミシェル・リーは昨日の準々決勝で、我慢強いラリーで世界ランキング1位のタイ・ツーイン(チャイニーズ・タイペイ)相手に大金星をあげて勢いを増しており、どう戦うか注目された。

 第1ゲーム前半はお互いにクリアで動かして、フェイントを利かせたドロップで得点を重ねていく静かな立ち上がりとなる。試合が動いたのは、11-10と奥原リードの場面。スピードを上げた奥原は素早く落下点に入り、精度の高いショットをリアコートに集めて追い込んでいく。それに対応できないミシェル・リーのミスを誘うなど7連続ポイントで奥原が18-10と主導権を握り、最後はスマッシュで決め21-12と危なげない展開で奪う。

 第2ゲームは、「1ゲームに立てた戦略がうまくいかなかったので、戦略を変えた」というミシェル・リーが、低いクリアで相手を追い込んでスマッシュを放ち自分から仕掛けていく。ラウンド側を執拗に狙われる奥原だが、それらをバックハンドでなく回り込んでクリア、クロスカットなどで打ち分け試合を有利に進めていく。改めて奥原のプレーの源泉であるフィジカル・体幹の強さを感じる展開になった。スピードを上げたミシェル・リーに17-17と追いつかれるも、奥原はドロップを有効打に連続でポイントを奪い、最後はミシェル・リーの放ったクロスロブがバックアウトとなり、21-18で奥原が決勝進出を果たした。

 試合後、奥原は「今日のゲーム内容には、満足していないし、パフォーマンスも悪かった」と課題を話すも「足、体調は問題ない。山口選手はオフェンス、ディフェンス両方とも調子が良い。いつも一緒に練習をしていて、相手の手の内を知っているので、タフな試合が予想されるが、作戦であったり、対策をとりながらゲームを進めていきたい。自分ができることの積み重ねが大切なので、あまり意識せず自分なりに調整し、全体的に上げていきます。」と4年ぶりの優勝に向けて意気込み語った。


女子シングルス②
2週連続のファイナル進出!気力・体力ともに充実した山口が圧倒

山口 茜(再春館製薬所) 21-15/21-15 チェン・ユーフェイ(中国)

 先週のインドネシアオープンで優勝を果たした世界ランキング2位の山口と、世界ランキング4位のチェン・ユーフェイの同世代の顔合わせとなった。世界トップでしのぎを削る両者の1年間の対戦は3勝4敗とチェン・ユーフェイが1つリードしている。

 第1ゲーム、好調を維持している山口は素早い反応で連続攻撃をさせないリターンや上からの多彩なショット、一方のチェン・ユーフェイはジャンピングスマッシュや171㎝から放たれる攻撃的なクリアを武器にお互いに点数を取り合う。「1ゲーム目はシャトルが飛んでバックアウトミスが多く出たので、途中修正してゲームに臨んだ。相手は修正できなかったようだ。」と山口が振り返ったようにロブをしっかり上げて、スマッシュリターンで前後に揺さぶりチェン・ユーフェイのミスを誘う。8-8からチェン・ユーフェイのロブのバックアウトなどで4連続、7連続ポイントを奪った山口が19-9と大量リードを奪う。スピードを上げてチェン・ユーフェイは対抗するも、山口が21-15でこのゲームを奪う。

 第2ゲームに入っても山口優位の流れは変わらない。ライン際への厳しいショットにも粘り強くリターンして、相手のミスを誘い連続ポイントを重ねていく。「スディルマンカップでは後手後手に回ってしまった。今日は焦らず我慢し、配球が低くなりすぎないようプレーした。相手のミスにも助けられた試合だった。」と振り返ったが、21-15と終わってみれば終始山口が試合をコントロールしていた。

 試合後、山口は「今週先週とよいプレーができているので、スピード感を持ったイメージで、かつ違うプレースタイルで臨みたい。長いラリーに付き合わず、スピード感を持った自分のプレーをしたい。よいプレーをして決勝戦を奥原選手と楽しみたい」と語った。


男子ダブルス
自分たちらしいプレーができず悔しい敗退

モハマド・アッサン/ヘンドラ・セティアワン(インドネシア) 22-20/21-10 嘉村 健士/園田 啓悟(トナミ運輸)

世界ランキング3位で"ノーロブ戦"を持ち味とする嘉村/園田と世界ランキング4位のモハマド・アッサン/ヘンドラ・セティアワンが対戦した。インドネシアペアは、リオオリンピック後に解散したものの昨年ペアを再結成し、全英選手権では優勝と幸先のいい再スタート切っている。4月のシンガポールオープン決勝と同じカードで、その時は嘉村/園田がファイナルゲームの末、優勝を果たしている。

 男子シングルスから男子ダブルスに種目が変わり、ノーロブ戦の嘉村/園田とドライブを得意とするインドネシアペアでスピード感、テンポが速くピリッとした緊張感に会場が包まれた。

 そんな中、お互いに先手を取ろうとドライブや低いロブを左右に打ち分けて、甘いリターンを園田、セティアワンのそれぞれが強烈なジャンピングスマッシュを叩き込んでいく。中盤から前衛でのゲームメイクで上回るインドネシアペアにじわりじわりと流れが傾いていく。15-18と嘉村/園田は追い込まれるが、会場の大きな声援を受けて息を吹き返す。素早いタッチでトップ&バックの形を作り、連打で攻め立てて、園田が前衛で決めるなど4連続ポイントで19-18と、逆転に成功する。延長ゲームになると、アッサンが気迫のスマッシュをライン際に叩き込み、続けてプッシュで決めて22-20でインドネシアペアが奪う。

 第2ゲームは、「自分たちのプレーができなかった。技術的なことよりもメンタル、自信による要素のもの。」と嘉村/園田が振り返ったよう、得意とする低空戦に持ち込めない。スマッシュを左右にリターンされ連続攻撃ができない。前半で4-11と大きく離されると、後半も流れは変わらず、ポジションを上げてくるセティアワンにドライブ、プッシュと連続で決められてしまう。結局は10-16から5連続ポイントを奪われ10-21と嘉村/園田は準決勝敗退となった。

 試合後、嘉村は「調子の悪い中、準決勝まで残れたのは良かった。調子を整えて次のタイオープンに向けて頑張りたい。」と話せば、園田は「今後も自分たちらしい低空戦で戦いたい。」と、次回トーナメントへ気持ちを切り替えた。

 勝ち上がったアッサン/セティアワンは明日の決勝で、大会史上2組目の3連覇に挑む世界ランキング1位のマルクス・フェルナンディ・ギデオン/ケビン・サンジャヤ・スカムルヨとのインドネシア同士の対戦となる。試合後、「インドネシア同士の対戦になってうれしい。全力で頑張りたい」と意気込みを語った。


女子ダブルス
成長の証、圧倒的攻撃力の強みを見せた松本/永原が初のダイハツヨネックスジャパンオープン決勝進出を決める

松本 麻佑/永原 和可那(北都銀行) 21-16/21-19 松友 美佐紀/髙橋 礼華(日本ユニシス)

 先週までの2か月弱の期間、世界ランキング1位の座についていた松本麻佑/永原和可那が、オリンピック金メダリストの松友美佐紀/髙橋礼華との準決勝に臨んだ。国際大会での対戦は4勝4敗のイーブンであるが、直近3試合は松友/髙橋が制しており、現在のランキングこそ上位にあっても松本/永原が挑戦する構図の対戦となった。

 第1ゲーム、攻撃的なレシーブから自在に角度あるアタックにつなげ、迫力のプレーを展開する松本/永原と、コートをよく動き、卓越したコンビネーションで得意の攻撃パターンに持ち込む松友/髙橋。互いに譲らぬ展開で12-12とゲームは進行してきたが、ここから1段ギアを上げたのは松本/永原であった。チャレンジの成功で13点目を取ると、怒涛の連続スマッシュから前へ前へとポジションを上げていき、最後まで打ち切って得点を奪っていく。後半抜け出した松本/永原が21-16として幸先よくゲームを奪う。

 第2ゲームも出だしから松本/永原の鋭いスマッシュは次々と相手コートを襲い、相手のディフェンスを打ち破って優位に進めていく。白熱した長いラリーを繰り広げながら、18-9と大量リードを奪う。しかし松本が「攻め急いでしまって、普段とは違う感じになってしまい、うまくプレーをコントロールできなかった。」というとおり、単発のミスが続くなどここから松本/永原にとっては試練の時間となる。対してそれまで精彩を欠いていた松友/髙橋は驚異の集中力を見せ、早いラリーや、執念のリターンて的確にコースを的確にコースを突いたアタックで急激に追い上げ、20-19と迫り、延長ゲームを期待する観客の応援ボルテージは最高潮となる。しかし最後は松本のスマッシュが決まり、松本/永原が21-19で辛くもストレート勝ちを収め、コート上で大きな喜びを表現した。

 試合後、松本が「自分たちは攻撃には自信があったので、レシーブの時にしのいで相手の強い形を作らせないように打ち、回していこうと思っていた。我慢して、チャンスで持ち味を出すことを意識しました。」と話せば、永原も「今日は久しぶりに自分たちらしいプレーを出せたと思う。後半追い上げられたが、2人で我慢して最後は攻めで勝ちを取ることができたのはよかった。」と語り、充実の勝利を喜んだ。「やっとダイハツヨネックスジャパンオープンの決勝に来られたので、明日は向かっていくつもりで臨みたい。」と、今大会制覇に意欲は十分だ。


混合ダブルス
圧倒的突破力、2年ぶりの制覇を狙うワン・イルユ/ファン・ドンピンが3年連続の決勝戦進出を決める。

ワン・イルユ/ファン・ドンピン(中国) 21-10/21-6 チャン・ペンスン/ゴー・リューイン(マレーシア)

 世界ランキング2位で、今年はまだ自国のエースペア相手以外には1度しか負けていないなど、圧倒的な強さを誇るワン・イルユ/ファン・ドンピンが登場。マレーシアの実力派ベテランペアであるチャン・ペンスン/ゴー・リューインとの一戦に臨んだ。

 先制したのはマレーシアペア。ゴーのショットがネットインとなって試合が幕を開けると、チャンのスマッシュ連打を決めるなど幸先よく3点を先取する。しかし、中国ペアはスピードと圧倒的なパワーにより厳しい高速ドライブを繰り出し、誘い出した球に身体を入れて徹底的にスマッシュを打ち込む猛攻を仕掛け、ペースをつかむ。どれだけ揺さぶられても全く体勢が崩れることなく、連続アタックを続けたワン/ファンが一気に突っ走り、21-10としてこのゲームを奪取する。

 第2ゲームに入ってもワン/ファンの勢い、怒涛の攻撃は止むことがない。ファンは打つ球種に関わらず素早いフロントコートへのチャージを見せ、ワンが豊富な運動量でシャトルに飛びついてスマッシュを連打し決めていく。苦しいマレーシアペアは、ゴーが鋭い読みによる前衛でのシャトル捌きで数本のノータッチを奪うのが精一杯であった。終始強力なアタックを浴びせたワン/ファンは全く隙を見せることなく21-6。わずか32分という本日最短試合で3年連続の決勝戦行きを決めた。

 圧倒的な力を見せたワン/ファンは試合後、「中国チームとして皆が優勝を目標としているので、残っている種目が減っていくとコーチからのプレッシャーもかかるけど、今日は浮き沈みがなく、安定したスムーズな試合運びができた。明日も自分たちの状態をキープして、いいゲームづくりをしていきたい。」と語り、今大会での充実ぶりそのままに、2年ぶり2度目の優勝に向けて自信を覗かせた。