観戦記

準々決勝 7月26日(金)

男子シングルス
声援を力にタフなゲームを制した桃田が安堵の笑みで連覇に向けて一歩前進

桃田 賢斗(NTT東日本) 21-21/21-21 アンソニー・シニスカ・ギンティング(インドネシア)

 世界ランキング1位の桃田(24歳)と世界ランキング8位のアンソニー・シニスカ・ギンティング(22歳)の顔を合わせた。東京オリンピックを争い、今後のバドミントン界の発展を担うだろう両選手の対戦に5000名を超える観客が固唾を飲んで見守った。これまでの戦績は、8勝3敗と桃田が勝ち越している。直近は4連勝しているものの、毎回、接戦でタフなゲームになることが予想された。

 第1ゲーム、相手の出方を伺うようにゆっくりと大きな球回しでリラックスした様子の桃田に対し、強烈なスマッシュを打ち込んでいくギンティングは「柔」と「剛」の対照的なプレースタイルの対戦に見えた。お互いに点を取り合い、試合が動いたのは、9-9。ゆっくりした展開で進める桃田の作戦が的中し、「準備していた戦略が上手く機能せず、ミスが多かった」と振り返ったギンティングのスマッシュ、ロブの連続サイドアウトとなるなど、6連続ポイントで桃田が流れを引き寄せ21-13として第1ゲームを奪う。

 第2ゲーム、8-4と桃田がリードを奪い、そのまま行くかと思われたが、世界トップランカー同士の対戦ではなかなかそう簡単にはいかない。「中盤以降の集中力がすごい、見習いたい」と桃田が語るようにギンティングは粘り強いレシーブを発揮する。これまで決まっていたところで決まらない桃田は、気持ちに焦りが出たのかロブやスマッシュの精度が下がり、わずかにアウトになってしまう。追い打ちをかけるようにギンティングの放ったショットが続けてネットに絡む苦しい展開になる。14-14と桃田が追いつかれると気迫の勝ったギンティングに20-22と奪われてしまう。

 ファイナルゲームはお互いに取り合うシーソーゲームとなる。8-8で桃田がヘアピンのリターンに素早く反応してプッシュを叩き込む。「(ファイナルゲームは)スタミナも消費していたので足も思うように動かなかった」というギンティングは、これまでリターンできていたショットがわずかに届かない。桃田も「(疲労で)打てなった」というなか我慢強いラリーで得点を重ねていく。最後はクリアがサイドアウトとなり、21-15として桃田が手放しで喜びを表現した。

 試合後、桃田は、「お互いの手の内はわかってきたので、今後は細かい部分、基礎をどれだけ上げられるかが勝負。」と語った。一方のギンティングは「いつも桃田選手とはタフな試合になる。今日はベストなパフォーマンスができたが、勝つことができなかったので、今回の課題を克服して、次の試合に臨みたい。」とリベンジを誓った。

桃田は明日の準決勝で、世界ランキング22位で2勝2敗のサイ・プラニース(インド)と対戦する。


女子シングルス
6年ぶりの優勝に向けて視界良好!スピード、ゲームメイクで相手を圧倒

山口 茜(再春館製薬所) 21-18/21-15 プサルラ・V・シンドゥ(インド)

前週のインドネシアオープンの決勝戦と同じ顔合わせとなった。世界ランキング2位156㎝の山口が世界ランキング5位179㎝のプサルラ・V・シンドゥをストレートで下し、優勝を果たした。リベンジに燃えるシンドゥを山口がどう迎え撃つか注目が集まった。

 第1ゲーム、長身を活かしたスマッシュ、リーチを活かしたショットでシンドゥにリードされてしまい、8-12と苦しい立ち上がりとなる。しかし、好調の山口は低いクリア、フェイントを利かせたドロップを武器に前後左右に打ち分け、徐々にリズムを引き寄せていく。ショットへの反応が速く、スマッシュをネット前にリターンして、連続攻撃をさせない。そこから攻めのパターンを作ってしっかりと決めていく。8連続ポイントを奪って21-15で山口が奪う。

 第2ゲームに入っても集中力の切れない山口が低いロブ、高い位置でのネットショットを軸に前半から試合を有利に進めていく。対するシンドゥは左右へのスマッシュ打ち分けを有効打に、じりじりと追い上げを見せていくが、「中盤の苦しい場面で観客の声援が力になった」と振り返った山口がスピードを上げて追撃を躱す。結局は一度のリード許すことなく、21-16で山口が準決勝進出を決めた。

 明日対戦する世界ランキング4位のチェン・ユーフェイ(中国)とは直近4試合では、1勝のみ。山口は「相手に回されるのではなく、自分から仕掛けていきたい。我慢負けはしたくない」と6年ぶりの優勝に向けて意気込みを語った。


女子ダブルス
日本人ペアの熱戦、若手ペアの壁となった松本/永原はさらなる高みへ突き進む。

松本 麻佑/永原 和可那(北都銀行) 23-21/21-18 志田 千陽/松山 奈未(再春館製薬所)

 B代表ながら格上相手に好ゲームを繰り広げ勝ち上がってきた志田千陽/松山奈未と今大会の第1シード選手である松本麻佑/永原和可那が準々決勝に臨んだ。

第1ゲーム、挑戦者として攻めのプレーを見せる志田/松山はいち早くトップ&バックの形を作りアタックを仕掛けるが、長身ペアである松本/永原の長いリーチを活かしたドライブリターンに苦しみ、なかなか連続得点を奪えない。自在に鋭いリターンで切り返し、永原の堅実なスマッシュでチャンスメイクをしては、松本のリストを効かせた角度あるショットで球を沈めた松本/永原が17-13と順調にリードを奪う。しかし終盤に志田/松山は追い上げを見せる。難しい球にも飛びついて対応し、チャンス球を沈めるなど5連続得点を奪い、逆転する。それでも地力に勝る松本/永原は動じず、延長ゲームに持ち込む。最後は決定機でミドルコートから志田の放ったスマッシュを松本が好反応で返球し、これがリターンエースとなって23-21、松本/永原がゲームを先取した。

 第2ゲームに入ると松本/永原はサービス回りやつなぎのショットで精彩を欠く立ち上がりとなり、スピードを上げた志田/松山が高低を巧みに交えた強打を駆使して11-6とリードして折り返す。しかし、これが世界1位を経験した選手のプレーか、ここから立て直して、早いタッチで相手にプレッシャーを与えた松本/永原が持ち前のテンポの良さを武器に2度の5連続得点を奪い16-13と逆転する。鉄壁のレシーブ、決定機で確実に仕留める永原のスマッシュ、松本のバックプッシュなど、多くの好打で主導権をつかみ取った松本/永原が21-18として貫禄の準決勝進出を果たした。

 熱戦を終え、松本は「2ゲーム目の前半は相手のスピードに圧倒された部分もあったが、後半はしっかりと空間を使って自分たちらしく攻められたことがよかった。」と試合を分析した。永原も「相手の攻撃がよくて引き気味の入りだったが、そこからしっかり前に出ようと、自分たちのプレーが出せたのがよかった。」と、後半は納得のゲームメイクであったことを感じさせた。明日の準決勝では髙橋礼華/松友美佐紀(日本ユニシス)が相手となり、「経験も豊富で、今大会安定しているタカマツペアなので、向かっていくだけです。」と声を揃えた松本/永原は、連日の日本人対決に勝つ意欲は十分だ。


混合ダブルス
緊迫したラリーの連続、勝負強さを発揮したチャン/ゴーが接戦を制す

チャン・ペンスン/ゴー・リューイン(マレーシア) 21-18、22-20 渡辺 勇大/東野 有紗(日本ユニシス)

 世界ランキング3位の渡辺勇大/東野有紗と5位のチャン・ペンスン/ゴー・リューインという準々決勝にふさわしいランカー同士の対戦が行われた。

 渡辺が抜群のレシーブを魅せて幕を開けた第1ゲーム、チャン/ゴーは積極性を前面に出してアタックの手数を増やしたラリーで展開する。対して渡辺/東野はコートを広く使い、緩急を絡めた組み立てで持ち味を発揮し、お互い点の取り合いとなって進んでいく。渡辺のスマッシュ連打と東野がフロントコートに詰めて放ったプッシュが決まり、17-14と優位に立った渡辺/東野だったが、ここからマレーシアペアがスピードを上げて追い上げる。渡辺のロブショットのバックアウトを皮切りに、チャンが躍動し、次々に気迫の籠ったスマッシュを打ち込んでいく。相手の肩口に、センターコースにと次々にエースショットを繰り出せば、ゴーも鋭い読みで前衛に入り球を沈めるなど、チャン/ゴーが6連続得点で20-17と一気に逆転する。最後はチャンが放った高めのスマッシュを東野が返球できず、21-18でチャン/ゴーがゲームの奪取に成功した。

 第2ゲーム、東野が果敢にフロントコートでシャトルを抑え込み渡辺/東野が6-3と序盤にリードを奪うが、マレーシアペアはチャンの強打を起点に盛り返していく。9-9と追いついたチャン/ゴーは、ゴーの的確なフロントコートへのチャージで相手を翻弄し、チャンの強打を演出し得点につなげていく。逆転するや否や一気に畳みかけて点差を広げ、19-14とする。渡辺/東野も再度集中力を増して、粘り強いレシーブと早いタッチのラリーに勝機を見出し、5連続得点をあげると、会場では大きな拍手がわき起こる。その後20-20と延長ゲームに突入したが、最後に抜け出したのはマレーシアペア。激しいラリーの中で、ゴーが甘い球を見逃さず前に出て沈めると、最後はチャンが意表を突くロングサービスから崩して勝負あり、チャン/ゴーが22-20として準決勝進出を勝ち取った。

 試合後、チャンは「直近は2連敗していたので、よく分析して試合に臨めたのがよかった。」と語っており、チャン/ゴーにとっては必然を引き寄せた会心の勝利である様子がうかがえた。