PLAYERS
大会ドローが発表!
世界の神々が威信をかけて戦う
8月29日にドローが公開され、ダイハツ・ヨネックスジャパンオープンの出場予定選手が固まった。ここでは日本にやってくるトッププレーヤーの顔ぶれと試合の見所を紹介する。
リー・チョンウェイ、アクセルセン、林丹が来日
スターが勢ぞろいする男子シングルス!
バドミントンの華・男子シングルスは世代交代の波が押し寄せつつある。今年は、新王者が誕生するのか、はたまた時代を引っ張ってきたカリスマたちが貫録を見せるのかが大きな見所になる。
いまもっとも注目を浴びているのは、8月27日に幕を閉じた世界選手権で初優勝した新星・ビクター・アクセルセン(デンマーク・WR2位)だろう。中国のチェン・ロン(WR6位)、リン・ダン(WR4位)という2人の五輪王者を連覇し、いまもっとも勢いがある。
そんな23歳が2015年の準優勝以上の結果を残すためには、まずインドのテクニシャン、スリカンス・キダムビ(WR8位)を倒したあと、世界選手権の決勝で激戦を演じたリン・ダンを準決勝で倒さなければならない。
百戦錬磨のリン・ダンは世界選手権の決勝でアクセルセンに敗れはしたが、持ち前の対応力で必ず敗因を分析し、修正してくるはずだ。研究されたアクセルセンがもう一段階上の戦術を見せられるかが、リン・ダン再突破のカギになりそうだ。
下の山からは34歳のリー・チョンウェイ(マレーシア・WR7位)に勝ち上がってほしい、という声が圧倒的に多い。
7度目の優勝という偉業がかかるチョンウェイは、今回がラストマッチになる可能性も。長い間、トップに居続ける努力を重ねながら、ビッグタイトルとの縁がなく「なんとか日本では勝ってほしい」と願うファンは多いのだ。
五輪、世界選手権で3度も銀メダルという彼のバドミントン人生における失意は大きいが、もし決勝へ進めばチョンウェイが会場のほとんどを味方につけることになる。それが彼の強みだ。
このほか韓国のソン・ワンホ(WR1位)、中国のシー・ユーチー(WR3位)といった個性ある選手たちも大会を盛り上げる。ホンコン・チャイナのン・カロン(WR9位)や、チャイニーズ・タイペイのチョウ・ティエンチェ(WR5位)も上位戦線に浮上しそうだ。
日本からは、残念ながら本戦にエントリーしている選手はいない。しかし常山幹太(トナミ運輸・WR33位)、西本拳太(トナミ運輸・61位)といった若手や、6月のインドネシアオープンで準優勝した坂井一将(日本ユニシス・42位)の予選からの出場が決まっており、勝って存在をアピールしたいところだ。
五輪・世界選手権のメダリストが全員集結
2年ぶりVめざし世界女王・奥原が迎え撃つ
女子シングルスは当代きってのトップ選手が集まる豪華な陣容になった。昨年のリオ五輪と8月の世界選手権のメダリストが全員参戦するというのだから、そのレベルの高さ物語る。
優勝候補はなんといっても、新世界女王になった奥原希望(日本ユニシス・WR8位)だ。世界選手権では、準々決勝でリオ五輪優勝のキャロリーナ・マリン(スペイン・WR5位)を、決勝では同2位のプサルラ・V・シンドゥ(インド・WR4位)をファイナルの激戦で下し、世界の頂点に立った。
リオ五輪後は右肩痛の故障のため、万全の体調ではなかったが、そのぶん「自分の器を大きくすることを心がけ、充実したトレーニングができました」とフィジカル面アップを強調していた。その成果が見事花咲き、40年ぶりの金メダルの偉業をもたらした形だ。
そんな奥原だが、今大会では厳しい戦いが待っている。シード権のない奥原は2回戦でなんと世界選手権の決勝で戦ったプサルラ・V・シンドゥと激突しそう。極めて"もったいない"対戦で、ここが大きな山場になるだろう。奥原のねばりか、シンドゥの攻撃力か、どちらが勝ちを引き寄せるかに注目してほしい。
一方、第2シードの山口茜(再春館製薬所・WR2位)にも期待がかかる。20歳の山口は世界選手権で第1シードに位置しながら準々決勝で敗れ、今大会で悔しさを払しょくしたい気持ちが強い。順当にいけば準々決勝でリオの女王・マリンと対戦することになる。これまでの対戦成績は1勝4敗で分が悪いが、得意の速いラリーに持ち込めれば、強打者を封じる策は見えてくるだろう。 もしマリンを突破できたら、準決勝では奥原との日本対決が待っている。
第1シードのチャイニーズ・タイペイのタイ・ツーイン(WR1位)がいる山は、準決勝でタイ・ツーインと前回女王で、技巧派のへ・ビンジャオ(中国・WR7位)が対決するか。
この1年で5勝を挙げ、12年に今大会を制しているタイ・ツーインは世界選手権を欠場し、コンディショニングが気になるところ。13年の世界女王・ラチャノック・インタノン(タイ・WR8位)やラリー型のスン・ジヒュンらも存在を示すかもしれない。
思わぬ伏兵になりそうなのが、19歳のチェン・ユーフェイ(中国・WR10位)だ。昨年の世界ジュニアを制したばかりで、本格的にスーパーシリーズに参戦したのも昨年から。最近まで準々決勝進出が精いっぱいだったが、世界選手権でいきなり銅メダルを獲得し、次代のエースに名乗りをあげた。
スーパーシリーズ優勝はまだなく、銅メダルの勢いを駆って日本で初優勝を遂げる可能性も。荒さはあるが、軽やかなフットワークはかつての強すぎた中国を感じさせる。
日本からはインドネシアオープン優勝の佐藤冴香(ヨネックス・WR15位)や急成長中の大堀彩(トナミ運輸・WR14位)も参戦する。緒戦から強敵と当たるが、この大きな壁を乗り越えることが2020年の東京五輪での夢実現に繋がるはずだ。
活況の日本女子ダブルス陣
日本決戦を目指せ!
もっとも日本の上位が期待できるのは世界選手権で日本ペアが大活躍した女子ダブルスだろう。8月の世界選手権では日本の3ペアが準々決勝以上に進出し、福島/廣田(再春館製薬所・WR6位)が銀メダルを獲得した。
福島/廣田は突然、ブレイクしたように見えるが、4月のマレーシアオープンでリオ五輪優勝の髙橋礼華/松友美佐紀(日本ユニシス・WR1位)に勝っており、今回の結果を生む兆しはあった。
福島は「私たちの持ち味はスピードある攻撃。サービスまわりに課題があるので、そこを克服できればまた変わると思います」とさらに高みを見続けている。2回戦でははやくも世界選手権の準々決勝で21-14、 25-27、21-19の激戦を演じた韓国のチャン・イェナ/イ・ソヒ(WR4位)との対戦が待っており、ここが最初の山場になる。
リオ五輪の金メダリスト・髙橋/松友は堂々の第1シードだ。こちらは世界選手権8強の米元小春/田中志穂(北都銀行・WR8位)と準々決勝であたりそう。
日本人対決は戦いにくいだろうが、松友はこんな話をしている。世界選手権での福万尚子/與猶くるみ(ヨネックス・WR10位)戦で3ゲーム19本で勝った試合について振り返ったときの言葉だ。「どちらが勝ってもおかしくない試合だったけれど、あの場面でも負けないという思いがあった」。この言葉こそ王者の貫録だろう。
米元/田中戦も競るだろうが、やはり分があるのは髙橋/松友だ。米元/田中は金メダリストの胸を借りて、飛躍のきっかけをつかみたい。
反対側の山では、福万尚子/與猶くるみが日本選手として活躍してくれそうだ。2人にとって強敵になりそうなのは、いまもっとも女子ダブルスで伸び盛りのチェン・チンチェン/ジァ・イーファン(中国・WR2位)だろう。この世界王者とは順当にいけば、準々決勝であたる。
中国ペアは髙橋/松友がもっとも警戒している20歳で、技巧派のチェン・チンチェンのネット前がとにかくやっかいだ。もし福万/與猶がここを突破できれば、準決勝では昨年、頂点に立ったカミラ・リター・ユール/クリスティナ・ペダセン(デンマーク・WR3位)と顔を合わせるか。
サービスから5球目までがとにかくうまいデンマークと、福万/與猶は1勝6敗だが、福万がネット前に突進し、與猶が決めるという黄金パターンで、日本決戦を実現してほしい。福万は「デンマークペアは手足が長く体のブレが大きい。まずは前衛の私が揺さぶりたい」と勝利の糸口を語っている。
混戦必至の男子ダブルス
日本の園田&嘉村の活躍に期待
この1年のスーパーシリーズで男子ダブルスは、王者がくるくると変わり、絶対王者が存在しない。ダイハツ・ヨネックスオープンジャパンでも混戦になりそうだ。
第1シードには昨年の王者のリー・ジュンホゥイ/リゥ・ユチェン(中国・WR2位)が就いた。1年前は世界ランキング14位にすぎなかったが、この1年で急成長。195㎝&193㎝からの鋭角攻撃は圧巻だ。
世界選手権で初めて銅メダルを獲得した園田啓悟/嘉村健士(トナミ運輸・WR4位)は、順当に勝ち進めば、この前回王者と準々決勝であたる。2人はともに169㎝で身軽な体を持ち、低く速いラリーを展開する。中国の高さが勝つか、日本の速さが勝つか、おもしろい試合になるだろう。
園田/嘉村は「日本は女子だけじゃない。男子だってやるんだぞというのを見せつけたい」と今大会への意欲を語っている。
反対側の山では、園田/嘉村がもっともライバル視するインドネシアのマルクス・フェルナルディ・ギデオン/ケビン・サンジャヤ・スカムルジョ(WR3位)がいる。フェイントを多用し、バドミントンのおもしろさをたっぷり教えてくれるインドネシアペアは今回の優勝候補の一つだ。
世界ランキングからいけば、準々決勝ではギデオン/サンジャヤVSリオ五輪2位のゴー・V シェム/タン・ウィーキョン(マレーシア・WR7位)の試合が見られそう。この対決になれば、技術とスピードに自信がある者同士の戦いになり、スリリングな一戦になる。
一方、第2シードでテクニシャンのマシアス・ボー/カルステン・モゲンセン(デンマーク・WR1位)は、準々決勝で同国のマッズ・ピーラー・コールディング/マッズ・コンラド・ピーターセン(WR8位)と当たるか。互いの手の内を知るだけにどちらが勝つか分からない。
日本からは井上拓斗/金子祐樹(日本ユニシス・WR18位)、保木卓朗/小林優吾(トナミ運輸・WR22位)らも本戦に参戦。日本にいるのは園田/嘉村だけではないというところを見せつけてほしい。
混合ダブルスは第1・2シードが中国ペア
アドコック夫妻も上位に進出か
混合ダブルスは、第1・2シードに就いた中国のルー・カイ/ファン・ヤチョン(WR2位)、ツァン・ナン/リー・インフィ(WR5位)に他がどういう挑戦するか、という構図だ。とはいえ、この2ペアは準決勝に上がることなく8月の世界選手権を終えており、決して盤石ではない。どのペアにもチャンスがあるというのが実情だろう。
そんな群雄割拠で"ミックスのスペシャリスト"という風格を備えているのが、イングランドのアドコック夫妻(WR4位)だ。どちらも混合ダブルスに専念している。
しかも家族として24時間をともにしているだけに、よく話し合いができている印象だ。どういう場面になったらどう動くか、どちらがとるか、徹底的に決め事が成立しているのだ。スター性もあり、2人がコートに立つとパッと明るくなる。
伝統的にこの種目が強い韓国やタイからも新星が飛び出すかもしれない。日本の数野/栗原(日本ユニシス・WR17位)、渡辺勇大/東野有紗(日本ユニシス・WR21位)はまずは準々決勝以上を見据えてほしい。とくに渡辺/東野は、東京五輪でのメダルを狙っているだけに、そろそろ結果がほしいところだ。
*世界ランキング(WR)は8月30日付