世界の超人たちを目撃せよ
1982年以来、数々の名勝負を生んできたダイハツ・ヨネックスジャパンオープン。新型コロナウイルス感染防止のため、3年ぶりに開かれることになった今大会を展望する。
*世界ランキングは7月19日現在
アクセルセン&桃田世代に挑む若手たち
世界の精鋭がひしめく男子シングルスは、世界ランキング1位に東京五輪の金メダリスト、ビクター・アクセルセン(デンマーク)、2位に日本のエース桃田賢斗が座る。2018年9月以降の約4年間、入れ替わりながらワンツーを守ってきた1994年生まれの2人が優勝候補だ。
2人を比べると、東京五輪後、攻撃力に磨きをかけたアクセルセンがやや優勢か。一方、桃田はこの1年間のワールドツアーで1勝に留まっているが、非凡で多彩なレシーブ力は健在。大阪の声援をバックに世界の猛者たち、そして因縁のライバル・アクセルセンも倒してほしいところだ。優勝すれば、男子シングルス史上2人目の3連覇を実現する。
この2人の座を虎視眈々と狙う勢力も生まれている。21年世界選手権優勝のロー・ケンユー(シンガポール)と22年トマス杯でインドを初優勝に導いたラクシャ・センは軽快なフットワーク、21年全英優勝のリー・ジジャ(マレーシア)は豪快なスマッシュで上位に這い上がってきた。若い勢いが新風を巻き起こしそう。
そのほか、東京五輪銅のアンソニー・シニスカ・ギンティング(インドネシア)、破壊力を誇るアンダース・アントンセン(デンマーク)、周天成(チャイニーズ・タイペイ)も真剣勝負を彩る大きな華になる。
大混戦の女子シングルス
今年7月17日までの1年間のワールドツアー(スーパー500以上)で、女子シングルスの女王はじつに7人。この数字が女子シングルス選手の力が拮抗していることを示している。
そのなかでわずかに先行するのは、前回チャンピオンの山口茜(日本)。鋭いフットワークと相手を追い込む重いショットで、21年世界選手権、22年全英オープンを制覇し、日本での3回目Vも夢ではない。
また、東京五輪後に急成長し、この1年でワールドツアー5勝をあげている20歳の安洗瑩(韓国)もおもしろい存在だ。韓国選手らしいクセのないオーバーヘッドストロークが印象的で、ラリーは優雅でありながら、鋭さも持ち合わせる。鮮烈な印象を残して日本で初優勝する可能性も十分だ。
もちろん東京五輪のメダリストたちも健在。金の陳雨菲(中国)、銀の戴資穎(チャイニーズ・タイペイ)、銅のプサルラ・V. シンドゥ (インド)は、それぞれ個性は異なるが女王にふさわしい風格を備える。このメンバーたちに絡むのが、昨年、ひざを負傷して戦線離脱していたリオ五輪金のキャロリーナ・マリン(スペイン)で、試合が白熱するのは間違いない。
男子ダブルスは保木卓朗&小林優吾に勢い
男子ダブルスは、日本の保木卓朗/小林優吾が台風の目になりそうだ。東京五輪後、日本のエースに浮上すると「このままではいけない」と苦手だったレシーブを強化。すると攻撃の幅が広がり、21年のワールドツアーファイナルズと世界選手権で優勝。世界中から警戒されるペアに進化を遂げた。
そんな2人のライバルになるのは、低空戦が得意なアジア勢たち。トリッキーなプレーで3連覇をねらうギデオン/スカムルヨ(インドネシア)や、ドライブ戦にめっぽう強い東京五輪金の李洋/王斉麟(チャイニーズ・タイペイ)は王座に近い。世界ランキングは高くないが、東京五輪銀の劉雨辰と新パートナーの欧烜屹(中国)も侮れない相手になりそうだ。
日本女子3ペアが優勝候補の女子ダブルス
日本の層がもっとも厚い女子ダブルスには3組もの優勝候補がいる。
東京五輪代表で世界一の高さを持つ松本麻佑/永原和可那、同代表でケガから完全復帰した福島由紀/廣田彩花、そして、ニューフェイスが全英チャンピオンの志田千陽/松山奈未だ。
2014年から組み始めた志田/松山は、素早いコンビネーションと速攻で7月現在、世界5位。すでに実績十分だが、挑戦者のような初々しさも残り、初優勝すれば一気に日本の人気者になるだろう。
とはいえ、頂点への道のりは険しい。トップ&バックから怒涛の波状攻撃を仕掛ける陳清晨/賈一凡(中国)、粘り強さに定評のある李紹希/申昇瓉(韓国)、金昭映/孔熙容(韓国)が、行く手を阻みにかかる。
渡辺勇大&東野有紗が初優勝目指す
混合ダブルスは、東京五輪のメダリストたちが頭一つ抜けている。昨年、決勝戦は中国対決となり、2勝12敗だった王懿律/黄東萍がねばって鄭思維/黄雅瓊を下し、金メダルを獲得。日本の渡辺勇大/東野有紗が銅メダルを手にした。今大会もこの3ペアが東京五輪を思わせる熱き戦いを演じてくれそう。
ワールドツアーの結果からいえば、昨年後半、速い球回しで4勝をあげたプアヴァラヌクロー/タエラッタナチャイ(タイ)も優勝争いに加わるはずだ。
『写真:BADMINTON PHOTO/日本バドミントン協会/T.KITAGAWA』
『PHOTO:BADMINTON PHOTO/NBA 2022/T.KITAGAWA』
2019年大会(第38回)結果 | ||
優勝 | 準優勝 | |
男子シングルス | 桃田賢斗 (日本) |
ヨナタン・クリスティ (インドネシア) |
女子シングルス | 山口茜 (日本) |
奥原希望 (日本) |
男子ダブルス | マルクス・F・ギデオン ケビン・S・スカムルヨ (インドネシア) |
モハマド・アッサン ヘンドラ・セティアワン (インドネシア) |
女子ダブルス | 金昭映 孔熙容 (韓国) |
松本麻佑(日本) 永原和可那 (日本) |
混合ダブルス | 王懿律 黄東萍 (中国) |
パラフィーン・ジョーダン メラティ・D・オクタフィアンティ (インドネシア) |